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木材から水素を生産する新技術 [ PDF:547.7KB ]

日量10kg 規模連続装置でCO2 吸収ガス化を実証 美濃輪智朗の写真美濃輪 智朗 (みのわ ともあき)
美濃連絡先
循環バイオマス研究ラボ

 すでに本誌で紹介したように、我々は二酸化炭素吸収ガス化によるバイオマスからの水素の直接生産技術の研究開発を行っている。バイオマスは再生可能な資源であり、再生時に大気中の二酸化炭素を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない性質(カーボンニュートラル)を持つことから、地球温暖化対策に寄与できる資源として期待されている。一方、水素はその使用時に水しか生成しないことから、将来のエネルギーキャリアとして期待されている。すなわち、バイオマスから水素を製造することは持続可能社会の構築に重要な課題の一つである。

 バイオマスから水素を製造する方法の一つとして二酸化炭素吸収ガス化がある。これは、炭素資源(石炭、石油やバイオマスなど)を水蒸気を用いてガス化する反応場に、二酸化炭素吸収剤(カルシウム)を添加し、発生する二酸化炭素を吸収させることで、水素を主成分とするクリーンガスを直接生産する手法である。理論式は下記のようになる。

    C+2H2O+CaO → 2H2+CaCO3

 この原理は(財)石炭利用総合センターと産総研の共同研究で見い出された日本独自の技術である。

 当研究ラボでは、経済産業省の補助金により、(財)石炭利用総合センター、中国電力株式会社、広島大学と共同で、バイオマスに特化した二酸化炭素吸収ガス化の研究開発を2002年度から行っている。これまでに実験室規模での基礎試験を行い、他の炭化水素資源(石炭、重質油等)と反応性が大きく異なることや理論量に近いクリーンガス(水素とメタン)が得られることが分かっている。一方、実用化のためにはこの反応を連続的に行わせることが必要不可欠である。プロジェクトの中で基礎検討と並行して、日量10kgの木材を処理する連続装置を作製した(写真)。本装置は加圧容器内部に反応器を設置するシェル方式を採用しており、反応器(内径9cm、長さ1m)は真中の加圧容器内に設置してある。加圧容器は7MPa耐圧で、反応器最高温度は750℃である。1日分の木粉原料(10kg)とカルシウム粉末を左右のホッパに予め入れておき、スクリューフィーダーで連続的に供給する(1〜2kg-木粉/時)。本装置により、CO2を含まないクリーンガス(水素濃度83%、メタン15%)の連続生産(木粉処理量1kg/時、生成ガス量 0.5Nm3/時)に成功し、本技術の連続処理に目処をつけることができた。海外(ドイツなど)でも同様な手法が開発されているが、CO2を完全に吸収できないため、水素濃度は70〜80%以下に留まっていた。

 プロセス試算によれば、吸収剤の再生プロセス(CaCO3 → CaO+CO2)に必要なエネルギーも含めて、1tonの木材から約1,000立方メートルのクリーンガスが得られると計算されている。今後はさらに、最適化による収率向上、安定運転、長時間運転などに取り組む予定である。


ベンチ試験装置の写真
写真 ベンチ試験装置
加圧容器内部に反応器を設置するシェル方式を採用。反応器は真中の加圧容器内、木粉原料ホッパとカルシウムホッパは左右の加圧容器内にそれぞれ設置。


関連情報

  • 林石英, 鈴木善三, 幡野博之, 原田道昭:化学工学論文集 25 (3) , 498-500 (1999) .
  • CCT Journal 第4号 2002.11.
  • プレス発表、平成14年10月14日:木材から水素の生産に成功
  • 特願2003-202626「バイオマスによる水素製造法」.
  • 共同研究者:花岡寿明, 藤本真司.
  • ※美濃輪 智朗:AIST Today, Vol. 3, No. 08, 30 (2003) .

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