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土壌病害センサーの開発 [ PDF:528.2KB ]

植物の病害をバイオセンサーで予測 軽部征夫の写真軽部 征夫 (かるべ いさお)
軽部連絡先
バイオニクス研究センター

 人間社会で起こっているような病気の問題が、野菜や花などの植物の世界でも起こっている。特に土の中のウィルス、バクテリア、糸状菌などの微生物が作物に感染することによって発病する病害のことを土壌病害と呼んでいる。しかしながら、土の中のウィルス、バクテリア、糸状菌などの微生物の全てが悪さをするわけではない。一般的には土1gあたり数千万個の微生物が住んでいる。これらは植物に対して害を与えるか否かで、善玉菌(一般微生物)と悪玉菌(病原微生物)に分けることができる。土の中ではそれらのバランスが重要である。健全な土には、善玉菌がたくさんいる。

 そこで、株式会社サカタのタネと共同研究でバイオセンサー技術をこの病害の予測に利用できないかと考えるにいたった。

 このバイオセンサーは、“畑が病害に侵されているか”を測定するのではなく、“この畑が病害に侵されやすい性質を持っているかどうか”といった従来予測が不可能であった、土壌が持つ病害に対する潜在的な特性を、最先端のバイオセンサー技術を用いて測定する画期的な装置である。

 土壌診断用バイオセンサーの基本的な原理は、土壌中の善玉菌と悪玉菌の活性状況を、それぞれの菌の呼吸に基づく酸素の減少量を指標として数値化して診断しようというものである。測定方法は、測定対象となる畑の土を緩衝液で懸濁したサンプルに、あらかじめ善玉菌を付着させたセンサーと悪玉菌を付着させたセンサーの二種類のセンサーをつける。約30分後に善玉菌側と悪玉菌側のどちらの数値が上がったのか(どちらの微生物がより活性化し、酸素を消費したのか)を比較することにより、善玉菌と悪玉菌のどちらにとって住み心地がよい土壌なのかを数値化する。つまり土壌病害が発生しやすい畑かどうかを事前に予測することが可能になる。この土壌診断バイオセンサーの開発によって、その畑の体質に合った善玉菌の選定と活用(畑の善玉菌の割合を増やすことにより病害の発生を予防)とその畑で発生しうる病害に応じた品種・栽培方法・作型・資材などの選定など、環境にやさしい自然な形での早期防除につなげることができる。有効微生物資材の投入などに関しては、経験や勘に頼ることなく、定量的に土壌改良ができる。また、土壌病害を軽減することにより化学農薬の使用量を減らし、環境保全型農業の推進が期待される。ひいては、消費者の求める「安心」「安全」に応えるものと考えられる。


図1 図2
図1 土壌診断用バイオセンサー 図2 土壌診断用バイオセンサーとニンジンより分離したFusarium属菌の大分生子


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