毎日義歯を使用することにより、義歯の汚れは強固なものとなっていく。特にヤニや歯石はいったん付着すると、市販の義歯洗浄剤では簡単に除去できないという問題があり不満も多い。
一方、二酸化チタン光触媒を応用する研究は多方面において行われており、歯科分野においても、歯牙の漂白や義歯に付着した歯石やヤニの除去に有効であることが報告されている。今回、我々は光触媒を利用して簡単かつ安全に義歯を痛めることなく、義歯の汚れを除去する洗浄剤を開発した。
通常の二酸化チタンでは洗浄能力が十分でなくさらに紫外線を照射しないと作用しないなど義歯洗浄剤として利用するには問題があった。そこで、我々は従来の二酸化チタン光触媒に表面処理を加えることで、可視光でしかも蛍光灯などの弱い光でも反応する光触媒を開発した。また、酸などを加えることにより光が当たらなくても市販の義歯洗浄剤と同等の洗浄能力を有する洗浄剤を開発した。洗浄剤に、実際に使用されて歯石やタバコのヤニで汚れた義歯を入れて、日中6時間明るい窓際に放置し(磨りガラスを通して太陽光が当たる程度)、歯石やヤニ、においの除去の様子を観察した。タバコヤニの付着した義歯の例を図1に示す。市販の義歯洗浄剤に比較して洗浄能力は高く、ほぼ完全に清掃することができた。さらに歯石が原因と思われる汚れが付着した義歯でも、市販の洗浄剤に比べて顕著な洗浄効果の差が認められた。
ここで紹介した例では太陽光を照射しているが、ブラックライト等の照射器を用いればもっと短時間でも同様の効果が得られる。さらに義歯の金属部分や樹脂部分に変色等の変化は全くなかった。このように使用中の義歯を浸漬した結果では、歯石、ヤニいずれもほぼ完全に除去することができた。
義歯洗浄剤は、歯科医師向け(プロユース)2種類と患者向けの合計3種類が用意されている。(図2)プロユースでは義歯の汚れを大きく無機系と有機系の2つに分け、それぞれを効率良く除去することを特徴としている。
光触媒は義歯洗浄剤としてだけでなくさまざまな歯科医療分野で応用が期待されている。たとえば現在開発が進んでいるのが歯の漂白である。光触媒は色素を分解する能力もあるため、歯に付着した色素も分解して漂白することができる。二酸化チタンを利用すれば有害な薬剤を利用することなく、光を照射するだけで歯を安全かつ簡単に短時間で漂白することができる。
他にも入れ歯のレジンやマウスピース、安定剤に練り込めば匂いや汚れが付着しにくくなると考えられ、現在研究を進めている。



