個々の火山を理解するには基本的な仕組み、すなわちメカニズムとマグマ供給量や応力場などの境界条件の情報が必要である。プレート境界にある富士火山の場合、この境界条件の時間変化が進化の鍵を握る。富士火山は、日本のほかの火山に比べて玄武岩質の火山としては山体規模が大きい。さらに、爆発的噴火を起こす場合があること、一回の噴火の噴出量や噴火間隔にばらつきがあることなどの特徴がある。最後の1707年宝永噴火が象徴的である。爆発的な噴火は災害の影響範囲を拡大させているし、時間変化する噴出量や噴火間隔のばらつきは、噴火予測を難しくさせている。
このような特徴をもつ富士火山の進化を捕らえるために、産総研では、1万5000年前より新しい噴出物について多量の年代測定を行いながら、火山学・岩石学を軸とした地質の総合的研究を進めている。富士火山を含む地域では、5万分の1スケールで「富士宮」図幅と「富士山」図幅の調査が進行中である。また、これと平行して、文部科学省振興調整費で「富士火山の噴火様式の進化」に関する研究(2001-2003年)も行われている。山腹に最深5mのトレンチを掘り、地表に露出していない噴出物の噴火年代・噴出量・噴火場所・噴火様式を明らかにしている。3年間で30カ所以上トレンチを掘る計画である。これらの基礎データは、内閣府富士山ハザードマップ検討委員会に提供されている。
本研究の中で、 1707年宝永噴火や青木ヶ原溶岩で有名な864年貞観噴火以外に、有史噴火が次々と発見された.紀元前200年以降の噴火口の分布を図1に示す。紀元前200年以降に起こった山腹噴火が噴出量・噴火場所・噴火様式の時系列図で整理されつつある(図2)。たとえば、7−11世紀頃には噴火が頻発し平均噴出率が増加した。富士火山では一般に割れ目噴火は北西南東方向に多く起こるが、西暦1000頃には全長12kmの割れ目噴火が山頂をまたいで南北方向に起こった。9世紀から12世紀頃までに、噴火割れ目の分布限界が山頂付近へ集まってきている。12世紀以降宝永噴火を除くと静穏期が続いている。このように、マグマ供給量や応力場などの境界条件の変化に対応したと考えられる様々な時間変化パターンを見出すことができる。複雑な時系列情報を整理するには、パターン化して見る方法や、境界条件の変化に伴うパターンの変化などを見極める必要があろう。以上より、富士火山の中長期予測のトレンドが見えてくると思われる。



