センサー・プロセッサ・アクチュエータが社会環境に埋め込まれ、ネットワーク化されたユビキタス情報環境では、多種多様な情報サービスが無数に並列分散して存在し、誰もが自在に情報サービスを利用できるような社会になることが期待されている。そのような分散型情報環境において様々なサービスを提供する基本システムとして、我々はユビキタス情報環境のためのマルチエージェントアーキテクチャ CONSORTS の設計・実装を行っている1) 2)(図1)。
従来のインターネット上での情報サービス(たとえばウェブのホームページ)とは異なり、ユビキタス情報環境では各々の情報サービスは高度に分散したものとなり、ユーザが自分の必要と要求に応じて適切な情報サービスを見つけ出し、それらを組み合わせることにより、目的とするサービスを新たに作り出してゆく仕掛けが必要となる。
CONSORTS では、個別に提供される情報サービスをプロセス(情報サービスの「部品」)として表現し、プロセス間の直列結合・並列実行によって個々のプロセスを組み合わせて目的となる情報サービスを作り上げてゆく。このような部品の表現には、既存のDAML-S, FIPAエージェント, WSDLなどの情報サービスやソフトウェアが利用できる。この合成の過程においてユーザの嗜好・行動履歴などの情報を用いることにより、ユーザに負担をかけることなくサービスの個別化を実現する。例えば、美術館での道案内・情報提供サービス3)(図2)を実現する場合、(1)ユーザの位置情報をセンサーから取得するプロセス、(2)ユーザと展示物との距離・方位を算出するプロセス、(3)これらの情報からユーザに適切な情報を検索するプロセス、などを連携させて動作させることにより、「ユーザの近くにあって、ユーザが興味を持つであろう展示物の説明をユーザに自動的に提示する」といった情報サービスを実現することが可能となる。
CONSORTS の応用イメージには、従来のユビキタスコンピューティングの「いつでもどこでも誰でも使える情報サービス」といったイメージを超えた、「群ユーザ支援」と呼ばれる、ユーザ群や社会活動を支援する情報サービスが含まれている。例えば、(1)社会的な時空間資源の配分: 多数のエージェントから成る交通システムにおける道路や施設利用時のユーザ間の連携や資源の配分 4)、(2)意味的な情報循環による知識の分配・再利用 : 知識を交換・流通させるためのオントロジー(共通辞書)の定義と配布、などの分野が挙げられる。

車谷 浩一
