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持続可能な循環型社会の実現 |
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特集 |
プロジェクト紹介 UNEP/SETAC Life Cycle Initiative 設立 −ライフサイクル思考に基づく社会の構築を目指して− |
[ PDF:4.9MB ] |
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新タイプのマグネト・リポソームを開発 [ PDF:542.2KB ] |
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| 将来のミサイル療法に利用可能な微粒子 |
松村 英夫
(まつむら ひでお)
 ライフエレクトロニクス研究ラボ
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我々が病気になったとき種々の薬のお世話になる。薬の作用の仕方には色々あるが、なによりも素早く的確に患部に届くことが望ましい。薬を内包したカプセル(ドラッグデリバリー用カプセル)を利用し患部へ届ける方法はこれまで色々研究されている。細胞膜の基本構造をつくる脂質二分子膜のリポソーム粒子もこれまでドラッグデリバリー用カプセルとして研究されてきたが、なかなか実用にはなっていない。我々はこのリポソームを磁気微粒子と組み合わせ(マグネト・リポソーム)新しい利用法を提案している。すなわち、磁場によりカプセルの体内での位置のコントロールが可能になり、目標とする患部細胞への薬物投与の効率化が期待されるものである。
今回開発したマグネト・リポソームは中心に磁気微粒子を、周囲にリポソーム微粒子を配置したものである(図1)。作製には、まず、塩化鉄を原料にヘマタイト磁気微粒子を合成する。磁気微粒子のうちでヘマタイトは磁力が小さいので、ミクロン程度の大きさになっても磁気的相互作用による自己会合が少なく、単一粒子で水溶液中に漂っている。しかし、より安定に単一粒子で分散させるために、ヘマタイト表面にマイナス電荷をもつシリカ層を合成し粒子表面の電荷量を増すことで、粒子間の電気的反発力により二つの粒子が付着しないようにした。これは非常によい単一粒子状態で水中に漂っている。この粒子表面上にリポソーム粒子を付着させる方法としては、それぞれの粒子がプラスとマイナス符号の電荷をもつ条件にして電気的引力を利用する方法やタンパク質の吸着性を利用したブリッジング(橋かけ)法を使う。作製プロセスを確認するため、各ステップで形成される微粒子表面の電荷符合の測定を電場をかけたとき粒子が正負どちらへ運動するかで調べた(電気泳動測定法)。表面に付く分子や粒子の種類に対応して表面電荷(および表面電位)の正負が変わることが示され、目的のものが出来たことが確認された(図2)。
マグネト・リポソームの医療応用の一つとして、エレクトロケモセラピーへの適用が考えられる。エレクトロケモセラピーとは、パルス電場のアシストで坑癌剤等の薬物を電極近傍の患部細胞へ投与する手法である。電場印加の際,薬剤を内包するマグネト・リポソームを用い、微粒子を引き寄せるための小型磁石を併用すれば、薬物投与の場所限定ができ、投与効率の改善や副作用の低減をはたせられると考えられる。
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図1(上)マグネト・リポソームの概念図 (内から、ヘマタイト、シリカ、タンパク質、リポソームの順) |
図2(右)各ステップにおける粒子表面電位 (図1の色に対応) |
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- 日経先端技術、No.12 (2002).
- 特許3200704号
- Langmuir, Vol. 17, (2001) 2283-2286.
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新しい化学反応場としてのマイクロ空間 [ PDF:547.6KB ] |
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| マイクロリアクター高度化技術の開発 |
前田 英明
(まえだ ひであき)
 マイクロ空間化学研究ラボ
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マイクロリアクターは、流路が数〜数百µm(µ=10-6、マイクロ)の微小反応器の総称である。マイクロリアクターは、(1)加熱、冷却速度が速い、(2)流れが層流である、(3)単位体積当たりの表面積が大きい、(4)物質の拡散長が短いので反応が迅速に進行する、等の特徴を持っている。このため高速かつ高選択性の反応を実現することが可能である。
我々は、マイクロドリルによる微細機械加工法を用いて、種々の材質の基板上に100〜500µm径の流路となる溝(マイクロチャネル)を作製してきた。本法は、一般的に多用されるフォトリソグラフ法に比べ加工限界、加工精度は劣るものの、100µm以上のチャネルであれば比較的短時間に低コストで加工できるという特徴を持っている。しかし、現在市販されている機械加工装置(NC工作機)のほとんどは大型で、保守・取り扱いが複雑である。そこで我々は、平板上へのマイクロ流路作製用の卓上型マイクロマシンニング装置を開発した(写真1)。本装置には市販のマイクロドリルが使用可能で、XYZの3軸制御により溝加工や穿孔加工が可能である。重量、体積共に従来のマシンニング装置に比べ約1/10であり、電源もAC100Vのコンパクト仕様となっている。
我々は、マイクロリアクターのさらなる高性能化を目的に、流路壁面を物理化学的手法で種々に修飾する技術(機能付与技術)を開発した。写真2は、約100nm(n=10-9、ナノ)径のシリカ粒子を分散させた溶液をマイクロ流路に流し、乾燥速度を厳密に制御することにより、流路壁面にシリカ粒子を自己組織化したものである。1回の操作で1層の自己組織化層を形成でき、繰り返し操作による多層化も可能である。このような組織構造は流体との接触面積を増大させるのに有効であり、触媒反応リアクター等への適用を試みている。また、我々は流路壁面へ酵素を担持したリアクターを開発した。従来のバッチ式反応に比較して飛躍的に反応効率が増大し、生化学反応用リアクターとして有望であることが分かった(図)。さらに、酵素の固定化に関し、可逆的に脱着できる方法も開発している。これにより失活後の酵素の交換が極めて容易に行え、長時間の連続した反応にも対応できるようになっている。
現在、マイクロ空間を対象とする研究が活発化しているが、まだ理解が不十分な現象も数多く残されている。今後、微小流体的挙動の計測・解析を含めた検討を実施し、マイクロ空間に特徴的な反応系の探索とそれを実現するためのマイクロリアクターの設計・構築を検討していく。
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写真1(左上) 卓上型マイクロマシンニング装置(Micro MC)
写真2(右上)マイクロ流路壁面の自己組織化ナノ粒子
図(右下) マイクロリアクターによる酵素反応
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| 走査型トンネル顕微鏡(STM)で可視化に成功 |
石田 敬雄
(いしだ たかお)
 機械システム研究部門
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ナノテクノロジーの観点から単一分子レベルでの機械動作の確認と制御が強く望まれている。また単一分子機械には将来的にはメモリーや表示素子などの分子デバイスへの応用が期待できる。しかし、これまで単一分子の機械動作を直接確認するのは非常に難しかった。
それでは、このような単一分子の機械動作の確認はどの様にしたらよいであろう?一つのアイディアとして走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、金属表面に固定した単一分子の機械動作の観察を行った。分子機械として動きそうな双極子モーメントを持ち電圧方向の変化で動くことが予想されるターフェニルと呼ばれる分子を用いた(図1)。自己組織化膜という手法を用いて、まず動かない分子(固定層)の単分子層を平坦な金の上に作る。次にこのターフェニル分子を固定層に埋め込んで試料を作った(図2)。
図3にこの分子機械を埋め込んだ自己組織化膜に覆われた金表面の走査型トンネル顕微鏡写真を示す。観察時のSTM探針の電圧方向を正にした場合(図3(a))には、埋め込んだ分子が見えないのだが、負に変換すると分子が見えるようになる(図3(b))。最も小さい点の大きさが2nmと分子の予想される大きさに近いので単一分子の機械動作の可視化に成功したものと考えられる。
非常に興味深いことは、分子の持つ双極子モーメントの方向からは、本来電界方向が、正の場合に分子が見えて負の場合に消えるはずであったがこの予想と反対になったところである。これはSTM観察では分子の形状の変化よりも、分子自身の電子状態(導電性)の変化を反映するためである。
今後はこれらの分子機械を集積化し、より実利的なメモリーなどの分子デバイスの試作などを行っていきたい。
なお、本研究は(財)化学技術戦略推進機構・分子協調研究体、セイコーエプソン(株)福島均氏や当所物質プロセス部門、ナノテクノロジー研究部門の方々と共同で行った。またNEDOならびに科学技術振興事業団さきがけ研究21にもお世話になった。この場を借りて関係各位に感謝する。
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図1(左上)ターフェニル分子の分子機械動作の概念図
図2(左下)ターフェニル分子の基盤への固定と観察の概念図
図3(右上)金表面に分子機械を埋め込んだ自己組織化膜のSTM像
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電子線照射による銀ナノワイヤの生成 [ PDF:1.4MB ] |
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| 世界最長の銀ナノワイヤの製造に成功 |
槇田 洋二
(まきた ようじ)
 海洋資源環境研究部門
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近年の電子デバイスの小型化に伴い、ナノ(十億分の一)メートルスケールの材料の製造技術開発が世界中で活発に行われている。半導体集積回路では小型化はもとより高速化、高機能化、低消費電力化が求められている。そのためには配線の細線化が必要不可欠であり、2010年には配線の線幅は、50nm程度になるといわれている。しかしながら、フォトリソグラフィー法による微細加工では、光の波長で加工精度が制限されるため、数百nm以下の加工は困難である。
我々は、マイナスの電荷を有する電子は通さず、プラスの電荷を有する銀イオン(Ag+)が内部を自由に動き回れる構造を持つ無機化合物に電子線を照射することにより、直径が数〜数十nmの銀のワイヤが成長することを見出した。この化合物(固体)に電子線を照射すると、電子を通しにくいため、表面が局所的にマイナスに帯電する。すると内部の銀イオン(Ag+)は帯電した局所表面に引き寄せられ、さらにその場所で電子と結合して金属銀(Ag)となり、外に銀細線として伸びていく。この反応が同じ場所で連続的に生じ、成長して銀ナノワイヤとなる(図)。まるで蜘蛛が糸を紡ぐように、固体内の銀がなくなるまで銀細線を吐き出していく。
本手法で得られる銀ナノワイヤは、酸化物などの銀化合物ではなく、銀単体のみで作られた結晶性の金属銀ナノワイヤである。銀ナノワイヤの平均的な大きさは、直径が数〜数十nm、長さが数万〜十万nm程度である。現在本手法で得られている最も長い銀ナノワイヤのアスペクト比(直径に対する長さの比)は2000以上にもなり、ナノ繊維ともいうべき世界最長の銀ナノワイヤである(写真)。今回の手法は連続的に銀を紡糸できるところに特徴があり効率的な製造技術になるものと期待される。
今回開発した銀ナノワイヤは、銀がすべての金属の中で最も電子をよく通す性質を持つことから、高い電子伝導性を示すものと期待される。そのため近年飛躍的に小型化する集積回路や量子素子の配線材料として、またフラットパネルディスプレイなどのFED(電界電子放出ディスプレイ)の電子放出源としての応用が期待できる。
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| 図 銀ナノワイヤ生成メカニズム |
写真 銀ナノワイヤの走査電子顕微鏡写真 |
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- 特開2002-67000号 金属ナノワイヤー及び金属ナノパーティクル
- 朝日新聞、日経産業新聞、四国新聞 平成14年5月9日
- 日刊工業新聞 平成14年5月10日
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| 自己損傷制御機能複合材料の実用化が可能に |
許亜
(しゅ や)
 スマートストラクチャー研究センター
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近年、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)など航空宇宙産業に広く使われている複合材料に形状記憶合金を埋め込み内部の微視的損傷の発生や拡大を抑制する研究が注目されている。これは形状記憶合金の低温マルテンサイト相状態で予め与えられた引張歪(予ひずみ)が、複合材料成形後の加熱により母相(オーステナイト相)に逆変態するときに、元の形状に回復する効果(形状記憶効果)によって生じる圧縮力を利用しようとするものである。
しかし、現在通常使われている熱処理済みTiNi形状記憶合金の逆変態温度(As)は70℃以下であるのに対し、耐熱エポキシ樹脂の熱硬化温度は130℃以上である。そのため、TiNi形状記憶合金をCFRP、GFRPなどの母材に埋め込み硬化成形すると、予ひずみを与えたTiNi合金が形状回復してしまい、TiNi合金の形状記憶効果を利用できなくなるという問題があった。そのため従来は、特殊な冶具によりTiNi合金の両端を固定して、予ひずみを保持したままCFRP、GFRPなどに埋め込んで硬化させなければならず、形状記憶合金を用いた機能性複合材料の大きさと形状が大きく制限され、実用化になかなか結びつかなかった。
これに対して我々は、適当な冷間加工処理(室温での塑性加工)を行うことにより、TiNi合金の逆変態温度をCFRPなどの母材の硬化温度以上に上昇させることに成功した。これは相変態により蓄積された内部弾性エネルギーをマルテンサイト相状態での塑性変形により緩和してマルテンサイト相を安定化させるという現象を利用したものである。この結果、TiNi合金の両端を固定しなくても、硬化中にTiNi合金が逆変態を起こして収縮する事なく、母材中に埋め込むことが可能となった。その後、埋め込んだTiNi合金を短時間通電加熱して一度逆変態させ、内部弾性エネルギーを回復させ、TiNi合金の逆変態温度を再び室温付近に戻す。以上の方法によって、TiNi合金の形状記憶効果を容易に利用できる機能性複合材料を製造することができた。更に、これらの方法では、TiNi合金ワイヤ製造過程の冷間伸線加工処理を利用して、逆変態温度を上昇させると同時に予ひずみも得られるため、わざわざ予ひずみを与える処理工程も省略でき、自己損傷制御機能を有する機能性複合材料の製造コストの大幅な低減も期待できる。
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写真 開発したTiNi/CFRP複合材料の断面電子顕微鏡(SEM)写真 |
図 TiNiを通電加熱するとき、測定したTiNi/CFRP複合材料の収縮ひずみ変化 |
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- Ya Xu, K. Otsuka, H. Yoshida, H. Nagai, R. Oishi, H. Horikawa, T. Kishi, Intermetallics, 10 (2002) 361-369.
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| スマートなセンシングやディスプレイへの応用が期待 |
徐 超男
(じょ ちょうなん)
 基礎素材研究部門
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発光材料の励起源としては、紫外線、電子線、X線、放射線、電界、化学反応などが一般的に知られている。一方、「応力発光」とは外部から機械的な力を加えることによって、材料が発光する現象である。例えば、地震等によって、岩石に強大な力がかかり、破壊される時に発光することがその一例である。しかし、機械的なエネルギーによって発光する材料は効率が低く、かつ発光が弱い為、今までは実用化された例はなかった。我々は高効率応力発光体の開発とその応用を目指して、材料の探索・開発、ならびに発光機構の解明を行っている。その結果、世界で初めて、可逆的な弾性領域での応力発光機能を有する材料の開発に成功した。
これとともに、新規な修飾ゾルゲル法や噴霧合成法を開発することにより、微粒子では発光が弱いという今までの常識を覆して、一般的に用いられる固相反応法で得た粗大粒子よりも強く発光させることができた。さらに、粒子形状、粒子径、並びに格子欠陥と結晶性を精密に制御するとともに、各パラメータの最適化により、超微粒子球状発光体の発光強度の飛躍的な向上を実現した。現在では、発光粒子の直径は数十nmから数µmの範囲で自由に制御することが可能である。
我々は材料開発にとどまらず、新規なセンシング技術など多分野への応用も開拓しつつある(図)。特に応力分布の新しい可視化手法の開発や今までなされていなかったマイクロ領域での応力分布の解析への応用を提唱し、注目されている。応力発光微粒子と樹脂との複合材料の成形体を作製し、応力を印可することで、応力の大きさに比例した応力発光画像を得ることにすでに成功している。光を利用した測定は、電極やリード線などの電気的な接触を必要としない上に、電磁干渉が無く遠隔観測ができるなどの利点がある。応力発光画像は種々の雰囲気中ではもちろん、様々な溶液中でも得ることができ、従来では不可能であった各種環境下でのダイナミックな応力分布の可視化を実現するものである。また、応力発光超微粒子は対象物に均一に塗布することができるので、マイクロ領域での応力分布の可視化が可能である。
さらに最近、省エネルギー、環境保全、高度情報化社会などの観点から、水銀フリー蛍光灯の開発や、壁掛けテレビのプラズマ・ディスプレイパネルの実用化など多分野への応用展開が強く期待されている。
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斬新な応力発光型センサ
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高効率球状発光体微粒子
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プラズマディスプレイ
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新規メカノディスプレイ
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環境に優しい照明
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| 図 新規な高効率発光の用途 |
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- C.N. Xu, T. Watanabe, M. Akiyama, X.G. Zheng: Appl. Phys. Lett., Vol. 74, No. 9, 1236-1238 (1999), Appl. Phys. Lett., Vol. 74, No. 17, 2114-2116 (1999).
- C.N. Xu, X.G. Zheng, M. Akiyama, K. Nonaka, T. Watanabe: Appl. Phys. Lett., Vol. 76, No. 2, 179-181 (2000).
- 徐超男, 化学工業, Vol.51, No.10, 54-72 (2000), 月刊ディスプレイ, Vol.7, No.9, 98-103 (2001), Encyclopedia of Smart Materials, Vol.1, pp. 190-201, John Wiley & Sons, 2002.
- 特許3136228, 3136340, 発光材料、その製造方法及びそれを用いた発光方法.
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離散化数値解法のための並列ソフトウェアプラットフォーム [ PDF:566.7KB ] |
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| 手持ちの数値解析プログラムを簡単に並列化 |
手塚 明
(てづか あきら)
 計算科学研究部門
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有限要素法、有限差分法、有限体積法などの離散化数値解法は、複雑な幾何学形状を持つ現実の物理現象のシミュレーションに有効な手法である。適用例としては、自動車の衝突解析が有名であるが、その他にも、ガスタービンの熱流体解析、建築構造物の安全性解析、家電品の信頼性解析等、その有用性は分野を問わず産業界において広く認められている。商用ソフトの利用のみでなく、高度な解析プログラムを自社で開発し、利用している企業も多い。一方、開発コスト削減のための開発プロセスの短縮化は企業存続のための至上命令であり、より大規模高精度で高速な解析への要求は急激に増加しつつある。高速化のための並列処理は極めて有効ではあるが、残念ながら、並列プログラムへの書き換えが煩わしいという理由により、その敷居が高いというのが現状である。
このような状況を踏まえて、産総研と(株)富士総合研究所は、並列解析を専門としない一般的な研究者・解析実務者であっても、既存の非並列離散化数値解析プログラムを容易に並列化可能な並列処理用共通ソフトウェアプラットフォームを開発し、平成14年3月からネット上でソースコード・マニュアルの無償提供を開始した。平成14年7月上旬までのダウンロードユーザーは130名以上である。本プラットフォームの詳細は関連情報に示したホームページを参照されたい。
本プラットフォームを利用すると、数日の内に大規模高速並列数値計算を実行することが可能となり、産業界に有効な、より現実に即した大規模実用解析の研究が促進される。多くの企業では、コスト削減の目的で自社開発の数値解析ソフトウェアの代わりに欧米開発の商用ソフトウェアに代替させる例が多々見られ、これらのブラックボックス的使用は企業内解析技術の退化につながることが懸念される。本プラットフォームを企業実務者が導入する事により、企業内で独自に開発されて来たソフトウェアの高速化・大規模化による性能のアップグレードが十分に可能である。
7月上旬に開催したユーザー会では、70名程の参加者と共に今後の開発への指針についての議論を行った。また、マイナーバージョンアップ、英語バージョンもリリースした。当研究部門の代表的なアクティビティとして、今後とも、ユーザーと共に、より良いソフトウェアプラットフォーム構築を目指していきたいと思っている。
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図1 並列プラットフォームでの並列プログラム書き換え
上:並列プラットフォームでのデータ・演算の流れ(4CPUの場合)/左:プログラム書き換え概要
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図2 数日のプログラム書き換えによる並列解析の例
左:解析条件/右:エンジンブロック,三次元弾性有限要素解析,103061節点,89152要素,4CPU
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| 三次元的な構造を取り入れた分類が可能に |
津田 宏治
(つだ こうじ)
 生命情報科学研究センター
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すべての生命現象の根幹を成すタンパク質については、既に多くのものが知られており、ある程度データベース化されている。例えばSCOPデータベース1)には、数千個のタンパク質が、階層的に分類されている。このような分類は、人の手によって行われてきたが、これを自動的に行おうというのが、この研究の動機である。
タンパク質は20種類のアミノ酸がつながった文字列として表される。これを分類する時にもっとも単純な方法は、各々のアミノ酸の数を数えて20次元のベクトルとし、これを既存の多変量解析の手法に与えることである(図1上)。この図では、書き表しやすいようにアミノ酸の種類を4つにしてある。多変量解析の方法としては、サポートベクターマシン(図2)などを用いることができる。
しかし、タンパク質の性質は、アミノ酸の頻度だけで決まるわけではない。特に、アミノ酸鎖は、空間上でまっすぐな形をしているのではなく、複雑に曲がり、折りたたまれていて、このような三次元的な構造が性質に大きな影響を与えている。ここで構造情報が「隠れ変数」hの系列として与えられていると仮定する(図1下)。この図ではh=1は、曲がっている部分を示し、h=2はまっすぐの部分を示す。次に、構造情報を考慮して分類を行うため、アミノ酸と隠れ変数を組として数えることを考える(図1下)。こうすることによって、アミノ酸の数は、まっすぐなところと、曲がっているところが区別されて数えられることになり、より高次元のベクトルが得られる。
しかし実は、このような構造情報が得られることは稀であるので、アミノ酸列から統計的に推定しなければならない。統計的な推定法では、h=1であるか、h=2であるかということは確定できず、例えば、h=1の確率が6割で、h=2が4割となる。
一方、我々が提案したMarginalized Kernelという方法では、不確定な推定結果を元にベクトルを作る2)。例えば、アミノ酸がAの所で、h=1である確率が6割の場合、(A,1)の数には0.6を加える。このような考え方に基づいて、実際のデータベースを用いて分類実験を行ったところ、従来の方法に比べて誤りの少ない優れた結果が得られた。
今後はこのような統計的な隠れ変数推定を用いる分類法を、他の対象(DNAなど)にも適用していきたい。
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図1 隠れ変数のない場合(上)と、ある場合(下)の特徴抽出 |
図2 サポートベクターマシンによる空間の分割例 |
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- 1) http://scop.berkeley.edu
- 2) K. Tsuda, T. Kin and K. Asai: "Marginalized Kernels for Biological Sequences",Bioinformatics, 2002 in press.
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脳は頑張れば報酬が貰えることを知っている [ PDF:567.6KB ] |
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| 報酬への期待の大きさを表す脳神経細胞を発見 |
設樂 宗孝
(しだら むねたか)
 脳神経情報研究部門
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我々の行動の基本は、目標の達成によって報酬を得ようというモチベーションによって決まる。では、目標を達成したときの報酬にどの位近づいたかという期待の大きさは脳内のどこでどのように表現されているのだろうか?これを調べようとするとき、まず問題になるのは、モチベーションというものが科学的に取り扱い難く、その大きさを定量的に表すのが難しいということである。そのため、脳の単一神経細胞レベルでどのように処理されているかの詳しい研究はほとんどされていなかった。我々は、モチベーションのレベルをコントロールできる課題(多試行報酬スケジュール課題)を開発してサルに学習させ、課題遂行中のサルの脳内の単一神経細胞から記録・解析を行った。
多試行報酬スケジュール課題は、「画面中心にあるターゲットの色が赤から緑に変わったら、1秒以内にバーから手を離す」という単純な視覚弁別試行から成る。通常の課題では、この試行を1回正解すれば報酬が与えられる。しかし、ここでは4回正解しないと報酬が得られないとした。サルに何回目を行っているかの手がかりを示してやると、1回目、2回目、3回目と報酬に近い試行ほどエラー率が少なくなった。一方、何回目を行っているかの手がかりおよび報酬の順序をランダムにして報酬へどれ位近いかを分からなくすると(ランダム条件)、サルは常に一定のエラー率で課題を行った。そこで、この課題を遂行中のサルの前頭葉内側部にある前帯状皮質(図1)より単一神経細胞の活動を記録・解析したところ、スケジュールが進行するに従って、反応強度が徐々に大きくなるものがあることが分かった(図2黒線)。この内、報酬がもらえる直前に活動が落ちるもの(図2上図)と、報酬を得た後に活動が落ちるもの(図2下図)があり、前者はまだもらえぬ報酬への期待、後者は報酬への近さを表している可能性がある。一方、ランダム条件ではこれらの神経細胞はその活動が消失するか、毎回一定の強さで反応していて、徐々に強くなるという特徴は失われることが分かった(図2赤点線)。従って、報酬への近さが分かっているときに見られるこれらの神経細胞の秩序だった活動は、報酬への期待や近さに関連していることが確かめられた1)。
今回の成果は、人間のやる気や行動計画を立てたり選んだりするときの脳内プロセスの解明や、秩序だったモチベーションが失われていると考えられる強迫性障害や薬物濫用患者の症状の理解や治療に役立つことが期待される。
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図1 サルの脳の断面図
左:サルの脳を上側(背側)から見た図。点線の位置での断面図を右に示す。右:緑色で示した部分が神経活動の記録を行った前帯状皮質である。
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図2 前帯状皮質の単一神経細胞の活動の2例
その1:スケジュール進行を示す手がかりがある時は報酬に近づくにしたがって神経活動が大きくなり、報酬をもらえる直前で活動が下がる(黒線)。ランダム条件では、神経活動は消失する(赤点線)。
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図2 前帯状皮質の単一神経細胞の活動の2例
その2:スケジュール進行を示す手がかりがある時は報酬に近づくにしたがって神経活動が大きくなり、報酬を得た直後に活動が下がる(黒線)。ランダム条件では、神経活動は毎回一定の大きさで出続ける(赤点線)。
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- 1) Anterior Cingulate: Single Neuronal Signals Related to Degree of Reward Expectancy. Shidara M. & Richmond BJ. Science 296: 1709-1711 (2002).
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| 過去の噴火から火砕流の流走分布を解明 |
山元 孝広
(やまもと たかひろ)
 深部地質環境研究センター
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富士火山では平成12年の秋から地下で低周波地震が数多く観測されている。浅い地震活動や地殻変動は観測されておらず、直ちに噴火に至る恐れはないものの、改めて富士山が活火山であることが一般にも認識されるようになってきた。産総研では平成11年度から、科学調査ボーリングを含めた富士火山の地質学的研究を既に始めており、社会的要請にうまく応えられる形で、タイミング良く成果を出すことができた。今回紹介する富士山の火砕流災害に関する知見はこの研究の成果の一部である。
火砕流は固形の火山噴出物と火山ガスや取り込まれた大気の混合物が高速で斜面を流れ下る現象で、雲仙普賢岳のような粘りけの多いケイ酸分に富んだマグマに多くの事例がある。ところが、富士山は粘りけの少ない玄武岩質マグマの火山であるため、火砕流の発生はほとんどないものと考えられていた。しかし、これまでの野外調査から、1)富士山の西〜南西山麓には3.2千年前、2.9千年前、2.5千年前の火砕流堆積物とこれが再移動した土石流堆積物が広がっていること、2)その発生年代は山頂火口で爆発的噴火が繰り返し発生していた時期と一致すること、が明らかになった。
火口から放出された噴出物は大気の流れにのって拡散していく。すなわち、噴出物の分布は噴火時の風向を受けやすく、普通は卓越風にのって火山の東側に分布しやすい。ところが3.2千年前、2.9千年前、2.5千年前の火砕流堆積物の火砕流堆積物はいずれも西〜南西山麓にのみ分布する(図)。一方、富士山の地形を解析すると、富士山頂の西〜南西斜面にのみ傾斜角が34度以上の斜面が存在し、火砕流の分布と良く一致することが明らかになった。このことは、富士山の火砕流は噴火様式によるものではなく、地形の影響が強いことを示唆している。火山弾・火山灰のような砕屑粒子の安息角(斜面で停止可能な最大角)は大きくても34度であり、これを超える斜面では砕屑粒子は転動して斜面上を流れ下ることが予期される。富士山山頂の西〜南西斜面はこの条件を備えており、この斜面上に大量の砕屑粒子が降り注ぐような噴火があったので、砕屑粒子群は定置できず火砕流として山麓まで流走したのであろう。斜面の状況は今も変わっておらず、今後も同様の噴火が発生した際には火砕流を伴うと予想される。一般的な、小型火砕流の動摩擦計数(H/L=0.30)から考えると、火砕流の本体は富士宮市広見や角木沢の集落地まで到達し得るのは確実であろう。それゆえ、このタイプの現象は火山防災上、十分に考慮される必要がある。
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| 図 富士火山西山麓における火砕流到達域 |
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デスクトップ型ジョセフソン電圧標準システムを開発 [ PDF:501.7KB ] |
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| 液体ヘリウムフリーを実現し、簡便化に成功 |
東海林 彰
(しょうじ あきら)
 エレクトロニクス研究部門
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ジョセフソン素子の示す周波数-電圧変換機能を利用する電圧標準システムは、電圧の1次標準器として世界の主要な標準研究所において用いられている。しかし、それらのシステムでは液体ヘリウムが冷媒として用いられているために、液体ヘリウムの入手が困難な国や地域においてはそれらのシステムを利用することはできない。このため、液体ヘリウムを必要としないジョセフソン電圧標準システムの開発が求められている。
この要請に答えるために、当研究部門では、デスクトップ型冷凍機を装備したジョセフソン電圧標準システムの開発を行っており、今回持ち運び可能な液体ヘリウムフリーのジョセフソン電圧標準システムのプロトタイプが実現された。本システムに採用された素子は、32,768個のNbN/TiNx/NbNジョセフソン素子(寸法4µm×4µm)をシリコンウエハ上に集積したものであり、産総研のクリーンルーム内において作製された。1個の素子の寸法は20mm×4.7mm×0.3mmである。用いた冷凍機はいわゆる2段のGifford-McMahon冷凍機であり、そのコールドヘッドは高さ50cm、直径12cmの円筒型のステンレス製ジャケットによって覆われている(写真)。
素子はジャケットの内部において冷凍機のコールドヘッドに接触させて冷却されており、コールドヘッド内部に埋め込まれたヒータに電流を供給することによって8-10Kの適当な温度に素子の温度を設定できる。
外部の回路からバイアス電流とマイクロ波(16GHz)を素子に供給することによって電圧標準素子としての動作試験を行った。その結果、素子の電流-電圧特性上に明瞭な定電圧ステップが観測された(図)。定電圧ステップの幅は1mA以上あり、環境雑音に対する素子の安定性を保証する上で十分な大きさである。
近い将来、今回開発したシステムにGPS(Global Positioning System)電波源を周波数基準源として用いるマイクロ波発生装置を付加する予定である。そうすることによって、100Vの交流電源さえあればどこでも高精度電圧を発生することが可能なジョセフソン電圧標準システムが実現されることになる。なお、現在得られている電圧の最高値は1Vであるが、最終的に10Vまで増大させる予定である。
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| 写真 デスクトップ型ジョセフソン電圧標準システムの概観 |
図 デスクトップ型ジョセフソン電圧標準システムの動作特性 |
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- 日経産業新聞、日刊工業新聞、日本工業新聞、化学工業日報新聞 2002年6月6日
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| 原子を冷やして投げ上げ精度向上 |
福山 康弘
(ふくやま やすひろ)
 計測標準研究部門
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産総研では周波数一次標準器を開発し、保持している。周波数一次標準器とは時間標準のおおもとになる装置であり、その内部で発生させたマイクロ波の周波数をセシウム原子の遷移周波数と比較し、その差をマイクロ波の発生源にフィードバックすることで秒の定義と整合性のある信号を作り出している。マイクロ波の周波数とセシウム原子の遷移周波数の差は、マイクロ波と相互作用させた後のセシウム原子の遷移の様子から求めることができる。このとき、セシウム原子との相互作用時間が長いほどマイクロ波の周波数を高い分解能で得ることができるが、これまで外力のかからない状態でセシウム原子とマイクロ波との相互作用時間を長くすることは非常に困難であった。しかし近年、原子のレーザ冷却技術が確立されたことにより、今までにない長い相互作用時間が得られるようになった。
原子のレーザ冷却とは、原子の共鳴スペクトルを利用してその速度選択を行い、レーザ光に対向する速度成分のみを減少させる技術である。レーザ光を6方向から照射することにより、原子の熱運動を抑制(=冷却)することができ、ついには原子を真空中で静止させることができる(図1)。
新しく開発された周波数一次標準器においては、静止させた原子をレーザ光を利用し鉛直上方に投げ上げ、その後重力に引かれて落ちてくることを利用している。この結果、セシウム原子は放物運動を行う。(放物運動時の原子の軌跡が噴水の水の動きに似ていることから、これを利用する周波数一次標準器を「原子泉」方式と呼んでいる。)セシウム原子が投げ上げられて落ちてくるまでの間には、マイクロ波との相互作用領域に入って一度静止して自由落下するため、長い相互作用時間を得ることができるのである。
我々はこの原子泉方式の周波数一次標準器を使い、セシウム原子の遷移周波数付近でのマイクロ波の周波数と遷移確率の様子(ラムゼー共鳴)を観察し(図2。線幅は1Hz以下)、マイクロ波の安定化に成功している。従来方式の周波数一次標準器におけるラムゼー共鳴の線幅が100Hz程度であったことから、大幅な不確かさの低減と正確さの向上が期待できる。これまでに、積算時間τに対してσ(τ)=7×10-13×τ-1/2の安定度が得られている。現在行っている周波数標準器からの出力である安定化されたマイクロ波と秒の定義との間のシフト量とその不確かさの推定作業の後、この標準器を用いてTAI(国際原子時)の校正を始める予定である。
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| 図1 レーザ冷却の原理 |
図2 原子泉方式周波数一次標準器で得られたラムゼー共鳴 |