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持続可能な循環型社会の実現 |
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特集 |
プロジェクト紹介 ヒト糖鎖遺伝子ライブラリー構築と網羅的機能解析 |
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低電圧で駆動する有機薄膜トランジスタ [ PDF:527.8KB ] |
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| 塗布法でサブミクロン台のチャネル長を実現 |
鎌田 俊英
(かまだ としひで)
 光技術研究部門
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有機半導体技術は、シリコン、化合物半導体に続く第三の半導体技術として、近年大きな注目が寄せられている。特に、フレキシビリティーを有する有機トランジスタは、電子ペーパーやプリント可能な情報タグなどのローエンドモバイル情報端末の創製を可能にすることから、近年その研究開発競争が国際的に激化してきているところである。
一般に、電界効果トランジスタ(FET)の特性は、ソースとドレインの間隔(チャネル長)に大きく依存するため、短いチャネル長を得て高性能化するためにフォトリソグラフィーなどの微細加工技術を適応することが検討されている。しかし、有機材料を用いる場合、フォトリソグラフィーは素材そのものを劣化させるという問題があり、適応は困難とされてきた。今回、本研究部門ではフォトリソグラフィーを用いることなく、高性能有機トランジスタを実現する方法を開発した。この方法は、電極および半導体層の素子内配置を大幅に変え、平面構造を立体化した「トップ&ボトムコンタクト型素子構造」という新しいトランジスタ素子構造を実現したものである(図)。この素子は、ソース、有機半導体、ドレインを順次積層していくことで構成されるため、チャネル長の制御は、両電極間に挟まれる半導体層の厚さの制御で可能となる。可溶性の高分子系半導体材料であるポリチオフェンを塗布法で製膜して、この構造を取る素子を作製したところ、0.5µmのチャネル長を有し、ソース−ドレイン間電圧が0.5Vという低い電圧の時でも、サブスレショルド電流の傾きが0.6V/桁を示す有機FETが得られた。この値は、著しく高い移動度を示す有機半導体材料として知られているペンタセンの単結晶を用いて作製した、有機FETで得られる値に匹敵するものである。
今回開発した有機FET素子は、微細加工技術を適応することなく、常温常圧下で単純積層工程だけで製造可能であるため、印刷プロセスなどが適応でき、集積回路の製造プロセスの大幅な簡素化、デバイスの省生産エネルギー化などをもたらす技術になると期待されている。
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写真 プラスチックフィルム上に作製した有機薄膜トランジスタ |
図 トップ&ボトムコンタクト型有機FET素子構造 |
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● 共著者 : 吉田 学(光技術研究部門)
● 日経先端技術 平成13年12月24日,04巻,4頁
● 日経産業新聞 平成14年1月22日
● 日経エレクトロニクス 平成14年2月25日,816号,132頁
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| 超大規模集積回路の高集積化・高速化に期待 |
内丸 祐子
(うちまる ゆうこ)
 環境調和技術研究部門
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超大規模集積回路(ULSI)半導体デバイスの高集積化・高速化には、ULSIの体積の大部分を占める、多層配線間の層間絶縁膜の高機能化がその鍵を握る(図1)。例えば絶縁膜をより低誘電率化することにより、配線間に蓄積される電気容量を低減させるなどで高速化が考えられている。
従来から用いられているシリコン酸化物(比誘電率=3.7)などの無機材料は比誘電率が高いので、多孔質化して密度を下げ、電気容量の低減化が図られてきた。しかしその結果、機械的強度が弱くなるという大きな問題を抱えている。一方、比誘電率の小さい有機ポリマー材料についても検討されているが、デバイス化に必要な耐熱性や機械的強度を満たすのは困難である。
今回、我々は無機材料と有機材料の長所を併せ持つ新発想の素材である、ボラジン−ケイ素ポリマーを世界で初めて開発した(図2)。技術研究組合超先端電子技術開発機構の協力の元にデバイス用の薄膜化と物性評価を行い、このポリマー薄膜が次々世代半導体規格に必要な比誘電率2.1以下の値を示すことを実証した。本ポリマーは溶媒に溶けやすく、簡便なスピンオン法によって、容易に薄膜化することができる。代表的な耐熱性有機ポリマーであるポリイミドに匹敵する耐熱性を有し、また硬度、弾性率ともに絶縁膜の実用に耐える特性を示した。
しかも従来のシリコン酸化物などと異なり、このポリマー薄膜のエッチングプロセスには地球温暖化ガスである代替フロンガスが不要なので、環境に優しい脱フロンの半導体プロセスの実現が期待される。レジスト材(一般に有機ポリマーを用いる)や、有機系の低誘電率層間絶縁材料に用いるエッチングガスとは異なるガスでエッチングできるので、本ポリマーの用途としては層間絶縁膜のみならず、有機系低誘電率層間絶縁材料用のハードマスクやエッチングストッパーとしても有望であろう(図3)。
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図1(左上)ULSIの多層配線技術
図2(上)ボラジン−ケイ素ポリマー合成と薄膜化
図3(左)ハードマスクとしてのボラジン−ケイ素ポリマー
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● 内丸祐子,山下 浩,甲田直子, 井上正巳,柳沢 寛,第10回ポリマー材料フォーラム,1PC17 (2001).
● M. Inoue, T. Fukuda, A. Matsuura, H. Yanazawa, Y. Uchimaru, N. Koda, and H. Yamashita : 2002 MRS Spring Meeting, B7.16.
● 日刊工業新聞 平成14年3月26日,日経産業新聞 平成14年3月26日,日本工業新聞 平成14年3月29日,化学工業日報 平成14年4月1日
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| マイクロ空間を利用した微粒子の合成 |
中村 浩之
(なかむら ひろゆき)
 マイクロ空間化学研究ラボ
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最近、 量子効果を用いる蛍光タグなど、ナノ粒子の応用も種々提案され、その需要が増大している。しかし一方で、10nm以下の粒径の揃ったナノ粒子を再現性よく供給し工業化した例は少ない。これは、ナノ粒子の合成には通常の粒子合成以上に精密な条件設定が必要なのに対し、合成量が増えるとその精密な条件設定が難しくなるためである。溶液の加熱を例に取っても、溶液量が少ないと均一に急速に加熱できるが、量が多くなるにつれて加熱速度が低下し、温度の均一性も低下する。通常は装置や条件の最適化を行い、これを回避しているが、それでもナノ粒子の場合は充分に制御できない場合がしばしばある。そこで我々はマイクロ空間を利用したこの問題の解決を検討している。
マイクロ空間を利用するナノ粒子合成装置の概念図を図に示す。シリンジポンプから押し出された原料は加熱媒体に差し掛かるところで急速に加熱され、加熱媒体から出ると、急速に冷却される。この方法を用いると、加熱時間と反応温度が非常に精密に制御できる。写真はこの方法を用いて得られたCdSeナノ粒子の蛍光である。このように、反応温度と加熱時間の組み合わせにより、一つの原料から様々な蛍光色を持つ粒子を得ることができる。この蛍光色から粒径2.5nm〜4nm程度の間で約0.5nm間隔で粒径制御が可能で、反応温度が高く、加熱時間が長いほど大きな粒径が得られることが分かった。また、この反応を繰り返し行っても粒度分布の再現性が非常に高いことが分かった。一つのリアクターの生産量は小さいが、並列操作により生産量を上げることが可能である。
このように我々は、マイクロ空間を利用すれば、ナノ粒子の合成条件を精密に制御しながら再現性よく連続的に合成が可能になることを示したが、今後、さらに粒度分布の狭い粒子を合成する方法を検討し、一方で、ナノ粒子の工業的合成法の確立を図る。
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図 マイクロ空間を用いるCdSeナノ粒子合成装置の概念図
シリンジポンプにより送液された原料は、熱媒体により急速に加熱され、熱媒体から出ると急速に冷却される。
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| 写真 CdSeナノ粒子の蛍光 |
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● 日刊工業新聞 平成14年3月20日
● H. Nakamura, M. Miyazaki, H. Maeda, P. Mulvaney : Langmuir (in print).
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| 携帯機器用小型燃料電池への応用 |
岡田 達弘
(おかだ たつひろ)
 環境調和技術研究部門
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近年、環境対応エネルギー技術の有力候補として燃料電池、中でも固体高分子型燃料電池の開発が急ピッチで進められているが、材料開発、効率の向上、耐久性向上、コスト削減などまだまだ壁は厚く、今後の研究開発に待たなければならない部分も多く残されている。
一方、最近になって小型携帯機器用燃料電池が有力な応用分野の一つとしてクローズアップされるようになってきた。既に国内外の電機メーカー各社が開発競争にしのぎを削っている。この際、燃料として水素、メタノール、あるいは多価アルコールと選択肢は残されているものの、何らかの液体燃料を用いることにすれば携帯機器の使用範囲が大幅に広がり将来の情報産業にも大きなインパクトを与えることは間違いない。
このような小型燃料電池用に可能性のある形態としては、平行平板型、すなわち平板チップの上に数ミリ角の燃料電池を多数並列に配置するという形式が主流である。モトローラ社、マンハッタン・サイエンティフィックス社など先行して開発を行っているのはこの形式であり、我が国でも何社かがこの形式を採用している。本研究部門では新たな可能性としてマイクロチューブ状の高分子電解質を用いる小型燃料電池を設計し、燃料電池の小型化に貢献できるシステムを実現するための研究を行っている。その一例を図1に示す。
燃料電池は高分子電解質を隔てて一方に燃料極触媒、他方に酸素(空気)極触媒を配置する必要があるため、チューブ状電解質内・外壁への触媒の固定化が非常に重要なポイントとなる。初期のモデルとして、ここでは内側にカーボン繊維担持Pt-Ru触媒、外側に化学メッキ法により析出したPt触媒で構成したものを示す。問題の出力であるが、現段階では図2に示すように、メタノール溶液を用いて1mW/cm2弱とまだまだ低いレベルであり、ここ1年以内に数10mW/cm2まで持っていきたいと考え現在改良中である。このレベルまでいけば、携帯機器に必要とされる発電能力をまかなえると試算している。製品開発までには燃料供給系、廃出系、アセンブル設計、電気系統設計など多くの課題が残されている。現在、産学官連携の共同研究を模索しているところである。日本発の技術の確立を目指している。
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図1 マイクロチューブ型燃料電池(ユニットセル)の外観写真
模式図の黒い部分がチューブ状電解質であり、その上に燃料供給用の注射針、下に電気端子が取り付けてある。
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図2 マイクロチューブ型ダイレクトメタノール燃料電池の出力特性 |
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● 日経産業新聞 平成13年12月11日
● トリガー 平成14年4月号, pp. 32-33.
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透明で密着性の良い酸化チタン薄膜を開発 [ PDF:482.6KB ] |
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| ゾルゲル法の問題点を克服 |
阿部 利彦
(あべ としひこ)
 基礎素材研究部門
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現在、光触媒作用を示すアナターゼ型酸化チタンは微粒子を中心に応用が進んでいる。また、溶液法として広く研究されているゾルゲル法は10時間以上もの長時間をかけて金属アルコキシドを加水分解・縮重合させて原溶液を得る必要があり、溶液の取り扱いを窒素ガス雰囲気中で行う不便さがあった。
これらの不便さを除去するために、我々は酸化チタン透明薄膜を溶液から製造する新しい技術を開発した。今回開発した方法は加水分解・縮重合とは別の反応によって原溶液を得るものであって、(1)合成時間が10分間程度と短い、(2)空気中で反応、塗布、保管ができる、(3)原液の濃度により膜厚の調整が容易、(4)基板との密着性が良い、などの利点がある。写真1に酸化チタンコーティングを施したガラス、ステンレス鋼を示す。この方法で得られる酸化チタン膜はアナターゼ型であって、光触媒作用が期待できる。また、薄膜は密着性が良いので金属の絶縁・耐食性皮膜として利用できる。
現実の問題として、鉄管の腐食に関しては水道水の低pH化による赤水が問題になっている。また、全世帯の2割に鉛水道管が使われており、2002年3月からは水道水中の鉛量が現在よりも5倍厳しい0.01mg/lに規制される。これらの問題に対応する水道管の防食技術としては、現在のところ塩ビコーティングがほぼ唯一の方法である。しかし、端面から腐食が進む、廃棄管は塩ビを含むのでリサイクルできない、などの問題がある。
写真2は鉄管の半分に酸化チタンコーティングを施した後、水道水中に3週間浸漬した状態を示す。コーティング部は腐食していないことが分かる。今後は酸化チタン薄膜のコーティング技術を長尺鉄管内面に適用して、赤水防止や鉛問題の改善に役立つことを目指して行く。
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| 写真1 酸化チタンコーティングの例 |
写真2 腐食試験後の酸化チタンコーティング鉄管 |
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● 日本工業新聞 平成14年1月24日、日刊工業新聞 平成14年1月25日、化学工業日報 平成14年1月25日
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| 誘導加熱によるタイヤリサイクルの高度化 |
安江 和夫
(やすえ かずお)
 基礎素材研究部門
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廃棄されるタイヤは、年間国内で約1億本と言われているが、出所が限られているので、そのうち9割弱が回収され、何らかの形でリサイクルされている。しかし、リサイクルの半分以上は、燃料として用いられる、いわゆるサーマルリサイクルと呼ばれる焼却処分に近いものである。資源保護や環境保全の立場からは、再びタイヤに戻したり、他のゴム製品に作り替えたりするマテリアルリサイクルが望まれる。
マテリアルリサイクルには、まず、タイヤを細かく切断・粉砕後、混ぜ物を除去する工程を繰り返し、ゴム粉にすることが必要である。しかし、ほとんどのタイヤには、スチール線が組み込まれていて、切断・粉砕の大きな障害となっている。スチール線はもともとタイヤの強化のために組み込まれたもので、その除去は容易ではない。
今回開発された方法は、誘導加熱によってスチール線のみを加熱し、切断をする前にスチール線とゴムを分離する方法である。写真1(a)に、誘導加熱直後のタイヤが風船状に膨らんだ様子を示す。この膨らんだ部分を切り裂いたところを(b)に示す。スチール線がゴムから分離しており、スチール線が極めて簡単に取り出せることが分かる。スチール線の加熱温度は数百度であり、局所加熱であるので、接触部以外は、ゴムは変質しないので、ゴムとしてのリサイクルも可能である。
本方法は迅速・省エネの分離法であるが、タイヤには、大きさ、形状、材質など種類が多く、これらに対応できる自動化処理システムの構築が今後の研究課題となる。
また、タイヤ以外にも本技術は拡張出来る。写真2に、コの字形のアルミニウム板の上に樹脂を複合化させた自動車用窓ガラスのシール材と、誘導加熱で分離した状態を示す。右上は処理前の状態、左上がその断面を示し、下が処理後を示す。アルミニウム板は百足状の複雑な形状をしているが、簡単に分離出来る事を示している。樹脂またはゴムと金属の複合体は、世の中に無数にあり、その廃棄物はほとんど埋め立て以外に処理方法が無かったが、本方式により新たなリサイクルが可能になると期待される。
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(a)
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(b)
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写真1 (a)誘導加熱により膨らんだ廃タイヤと(b)(a)を切り裂いたところ |
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| 写真2 分離した窓ガラスシール複合材 |
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| 院内感染菌対策や水質浄化に |
野浪 亨
(のなみ とおる)
 セラミックス研究部門
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大腸菌やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を殺菌できる複合セラミックス触媒を開発した。アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒をベースに複合化したセラミックス触媒で、細菌や有機物の吸着・分解能力がある。二酸化チタンの表面処理を行ったことに加え、アパタイトが細菌を一旦吸着するため、家庭の室内蛍光灯程度の弱い光でも大腸菌やMRSAを殺菌できる。
大腸菌やMRSAを用いた実験では当初1,000個であった細菌が従来の二酸化チタン単体を使用した場合は5時間後に約600個生存していたが、新材料では30ppm程度の濃度で3時間後には10個以下、5時間後には0になった(図)。
水処理なら5−30ppm程度の濃度で効果があり、漂白や有害有機物の分解効果もある。安全で無害なため風呂やプール、病院での院内感染防止、器具や衣料などの滅菌や洗浄に使用できる。
浴槽水の浄化には一般に塩素系薬剤が用いられているが、人体に対する安全性やトリハロメタンの生成など環境への影響が問題となっている。今回開発されたセラミックス触媒を用いると、これら塩素剤の使用量を大きく低減でき、また大腸菌の滅菌が可能なだけでなく、湯中の有機物やバスタブのぬめりなども分解できる。また、温泉(アルカリ泉質)でも殺菌効果が落ちない、イヤな臭いがなく、人体に対して安全、配管内にバイオフィルムができにくいなど様々な利点がある。
本成果の一部は共同研究をもとに(株)ヘルスケミカルが風呂浄化剤として商品化を進めている(写真)。
このセラミックス触媒は他にも衣類や電子部品、機械部品、食器などの殺菌や防カビ、洗浄にも使用できる。また、有機物の分解機能や脱色機能に優れ、血液成分やタバコのヤニで染色した紙も二酸化チタン単体ではほとんど脱色しないがセラミックス触媒では5分間程度で脱色出来るなど今までにない効果を示し、今後の応用拡大を期待している。
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図 大腸菌の生存数 従来の二酸化チタンにくらべて新開発セラミックス触媒は顕著な効果を示す。 |
写真 風呂浄化剤として試作した錠剤 |
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● T. Nonami, et al. : Apatite formation on TiO2 photocatalyst in a pseude body solution, Material Reserch Bulletin, 33, 125-131 (1998).
● T. Nonami, et al. : Titanium dioxide and apatite coated fibrous ceramics photocatalyst, Materials Research Society Symposium Proceedings, 549, 147-152 (1999).
● 野浪 亨,アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒,エコインダストリー,3,5-13 (2000).
● T. Nonami, Photocatalyst with built in absorption function, Materials Research Society Symposium Proceedings128, 10 (2000).
● 野浪 亨,アパタイト付着セラミックス複合抗菌材の開発,12,機能材料 (2001).
● 野浪 亨,光触媒とアパタイト,日刊工業新聞社 (2002).
● 日刊工業新聞 平成14年3月7日
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PDB代表タンパク質チェイン決定システム [ PDF:528.9KB ] |
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| タンパク質立体構造研究への応用 |
野口 保
(のぐち たもつ)
 生命情報科学研究センター
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タンパク質立体構造データベース(PDB)は、近年のX線結晶回折やNMRによる構造解析技術の進歩と電子顕微鏡による構造解析の増加によって急増し、2002年3月の時点で17,600エントリーを超えた。各種生物種のゲノムプロジェクトの後を受けて始まった「構造ゲノミックスプロジェクト(ゲノムの中に含まれるタンパク質立体構造をすべて決める)」によって、今後さらにその増加は加速すると予想されている。しかしながら、冗長さやデータの不完全性さのために、PDBの全てのエントリーがタンパク質の立体構造解析に適しているとは言えず、何らかの基準で分類して、代表タンパク質を決定する必要がある。
タンパク質は、一つにつながったチェイン*が折り畳まり、それが単独もしくは複数結合することによって特有の構造を作り、機能を発揮する。我々はこのチェイン同士を比較・分類し、その中から任意の優先度で選ばれた代表チェインを決定するシステム(PDB代表タンパク質チェイン決定システム:PDB−REPRDB)1)を構築した。従来はチェイン同士の比較・分類は近似的に配列の類似性(ID%)を指標にして行われてきたが、本システムでは、ID%による分類に、チェインを重ね合わせた時の原子間距離の最大値(Dmax)と平均原子間距離(rmsd)を分類の指標に加え、より正確な分類を自動的に行っている。また、本システムは、WWWによるインタフェイス(図1)を用いることで、それぞれの研究に合った代表セットを即時に提供できるようにしている。
本システムで作成した代表タンパク質チェインは、タンパク質二次構造予測2)の基礎データとなる構造ライブラリのセットや、並列タンパク質情報解析(PAPIA)システム3)の検索対象となるデータベースの作成に用いられている。さらに、ID%が高いタンパク質同士の比較から、部分的に構造変化を起こしている部位(図2)の検出にも利用可能である。
本システムは、PAPIAシステムのWWWサーバーにて公開している。
*チェイン 20種類の基本アミノ酸がペプチド結合を繰り返してできるポリペプチド鎖。タンパク質によって、含まれるアミノ酸の量・結合順序が異なる。
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図1(左) PDB代表タンパク質チェイン決定システム:PDB-REPRDBのWWWページ
図2(上) DNAが結合したことによって構造変化を起こした例:HhaI DNA Methyltransferase
青色のリボンは、DNAが結合した構造:6MHTA、赤色のリボンは、単量体の構造:1HMY
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● 1) T. Noguchi, K. Onizuka, M. Ando, H. Matsuda and Y. Akiyama : Bioinformatics 16, 6, 520-526 (2000).
● 2) T. Noguchi, M. Ito, H. Matsuda, Y. Akiyama and K. Nishikawa : Research Communications in Biochemistry, Cell & Molecular Biology 5, 115-131 (2001).
● 3) http://www.cbrc.jp/papia/
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変容する記憶の脳イメージング検出に成功! [ PDF:496.9KB ] |
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| 人間の高度な知能や記憶解明への大きな手掛かり |
仁木 和久
(にき かずひさ)
 脳神経情報研究部門
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人間の記憶は、計算機の記憶とは異なり年月が経つとその性質が変わることを、磁気共鳴画像装置(MRI)を使った脳イメージング法で明らかにした。
記憶の形成には海馬が昔から有名である。しかし、海馬での記憶の変容の検出には多くの研究者が失敗している。我々は、空間的移動体験の記憶が海馬の本来の機能であることに注目し、一度だけ訪ねた場所での行動や風景を被験者に思い出してもらう心理実験を行い、記憶形成後10年以上の経過年月に及ぶ海馬の働きの変化をMRIで解析した。MRIは、磁気とラジオ波の働きにより、人体内部の構造や臓器の機能、脳活動を高分解能で画像化できる装置である。
図1は、MRI解析結果の脳画像である(J. of Cognitive Neuroscience Vol.14, No.3, 502, 2002 より)。 2年以内に訪れた場所を思い出した時に特に活動する部位が、海馬傍回と海馬(図1、左図)にあり、7年以上昔に訪れた場所を思い出した時に相対的に活動する部位が前頭葉(図1、右図)であることを示している。この実験結果は、海馬で形成された記憶が変化しつつも形成後5年以上も維持され、その間に一般的な意味記憶などの形で大脳前頭葉などに蓄えられる可能性を示唆している。
我々の最近の研究では、大脳前頭葉などに蓄えられた意味記憶の想起に海馬が役割を果たし(図2)、その機能的延長上では、創造性の原動力である「洞察(インサイト)」という高次の認知機能にも関与してことを明らかにしている。記憶の目的が後での利用だとすると、大脳前頭葉に蓄えられた意味記憶を海馬が利用できることを意味する(なんと、これは脳損傷患者データから推測して得られた現在の記憶心理学の常識に反する)。海馬は、「後での利用」のため記憶を形成し利用する装置であるが、同時に、驚くべき知的能力を生み出す装置であった。
人間の記憶システムを理解することは、高度な人間的な知的機能の理解にも直結していることを我々は明らかにしつつある。この道の先には、一瞬にして成立する学習など人間の優れた知的能力の探求への、今まで不可能であった研究分野が開かれている。
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図1(上) 最近の記憶の想起で、海馬傍回、海馬での活動が見られる
記憶形成後2年以内の最近の記憶の想起では、海馬傍回、海馬に特徴的な活動が見られる(図左、紫円内)が、記憶形成後7年以上の古い記憶の想起では、前頭葉に特徴的な活動が見られ、海馬での強い活動はない(図右)。色は白いほど活動が強いことを示す。
図2(右) 意味記憶想起時の海馬の活動
意味記憶想起条件(青色)、意味記憶形成条件(赤色)での海馬の活動記録に示されるように、左右の海馬で意味記憶の想起時に強い活動が見られる。図中の黄色のラインは、意味記憶想起条件と形成条件の丁度中間的な条件での反応を示す。
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● K. Niki and J. Luo : An fMRI study on the time-limited role of the medial temporal lobe in long-term topographical autobiographic memory, JOCN 14 : 3, 500-507 (2002).
● J. Luo and K. Niki : The role of medial temporal lobe in extensive retrieval of task-related knowledge, Hippocampus 12 : 4 (in print, 2002).
● J. Luo and K. Niki : Function of Hippocampus in ‘Insight’ of Problem Solving, Hippocampus (in print, 2002).
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| ハードウェアと基盤ソフトウェアを提供 |
比留川 博久
(ひるかわ ひろひさ)
 知能システム研究部門
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本研究部門ヒューマノイド研究グループは、経済産業省が98年から実施中の「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」の一環として、働く人間型ロボットHRP-2プロトタイプと、人間型ロボットのソフトウェアプラットフォームOpenHRPを、川田工業株式会社、株式会社安川電機、清水建設株式会社、東京大学と共同で開発した。
HRP-2プロトタイプ(写真)は、身長154cm、体重58kg(バッテリ含む)、腰2軸を含む30自由度を有し、軽量多自由度を実現している。また、股関節が片持ち構造で隘路の歩行が可能な点、電装系の高密度実装によりバックパックを不要とした点に特徴がある。今後、不整地歩行、転倒制御、転倒回復動作などの人間型ロボットの共通基盤技術および人間との共同作業などの応用技術の研究開発に利用される予定である。
OpenHRPは、人間型ロボットのシミュレータと制御ソフトウェアから成る(図)。シミュレータは、動力学のシミュレーション、視野画像の生成を行うことができる。制御ソフトウェアは、二足歩行、体操をするなどの全身動作を制御することができる。OpenHRPの特徴は、シミュレータ上で開発したソフトウェアがバイナリ互換で実機に適用できる点と、標準的分散オブジェクトシステムCORBAを利用することにより拡張が容易でネットワーク上に分散可能なアーキテクチャとなっている点である。これまでに、本田技研工業株式会社が製作した人間型ロボットHRP-1、および、今回開発したHRP-2プロトタイプのシミュレーションと制御に適用され、有効性が確認されている。また、OpenHRPのシミュレータ部分は、既にホームページ上に公開され1)、多くのユーザにより利用され始めている。
HRP-2プロトタイプおよびOpenHRPは、共通基盤技術として、人間型ロボットの研究開発に今後大きく貢献するものと期待されている。
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写真(左) 働く人間型ロボットHRP-2プロトタイプ |
図(右) 人間型ロボットのソフトウェアプラットフォームOpenHRP |
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| 地球軌道変動・古気候変動と地磁気の関連 |
山崎 俊嗣
(やまざき としつぐ)
 海洋資源環境研究部門 |
海底の堆積物には、過去の地磁気変動が磁鉄鉱のような磁性鉱物により残留磁気として記録され、条件が良ければそれが現在まで保存されている(いわば地磁気の化石)。地磁気は、地球の外核(深さ約2,900〜5,100kmの部分で、溶融した鉄を主成分とする)における流動によって生成・維持されていると考えられているが(「地磁気ダイナモ」と呼ばれる)、過去の地磁気変動の実態やその原因には未だ不明な点が多い。従来、地磁気ダイナモのエネルギーは核内ですべてまかなわれていて、地磁気は地球の他の変動とは独立であるとする考えが一般的であった。そうであれば、外核の物性から理論的には1〜2万年程度より長い周期の地磁気変動は存在しないはずであった。
我々は、西部赤道太平洋(ニューギニア沖)で採取された過去230万年間に堆積した42m長の堆積物柱状試料について、微弱な残留磁気を高感度の磁力計で測定し、地磁気の強度と方位の連続的な変動記録を得た。周波数解析の結果、地磁気の方向と強さの両方に、約10万年という今まで知られていなかった長周期の変動成分が含まれていることが明らかとなった(図1)。これは、地磁気ダイナモに核外からエネルギーが供給されていることを意味する。10万年という周期は、地球軌道の離心率(公転の楕円軌道の形を表すパラメータ)の変化および氷期−間氷期サイクルの周期と一致することから、これらの変動が地磁気を揺るがすエネルギーとなっていると考えられる(図2)。地球軌道要素の変動そのものが核・マントル結合を通じて地磁気変動をもたらす可能性、あるいは、地球軌道要素の変動にコントロールされている古気候変動(氷期−間氷期変動)に伴う氷床量変動が地球回転に影響を与え、それが核・マントル結合を通じて地磁気変動をもたらす可能性が考えられる。
過去の地磁気変動の記録は、地層の年代を決定する手法の一つとして地質の研究に広く応用されてきた。今回の発見により、地球システム変動の一部として地磁気変動をとらえる必要性が明確となった。地球温暖化や生物活動・進化などにも地磁気変動が関係している可能性があり、地球の持つ基本的環境の一つとして、過去の地磁気変動の実態解明が進むことが期待される。
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図1 地磁気方位(伏角)の変動 赤線は10万年周期成分を抽出したもの
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| 図2 地球システム変動の一部としての地磁気変動 |
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● T. Yamazaki and H. Oda : Science, 295, 2435-2438 (2002).
● 毎日新聞 平成14年3月31日、日刊工業新聞 平成14年3月29日
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| 地表から深さ10キロメートルの流体の存在を探る |
光畑 裕司
(みつはた ゆうじ)
 地圏資源環境研究部門
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地震が起きる度に、我々は足下の目に見えない地下深部に存在する自然の力の巨大さに驚かされる。医療技術で用いられるX線や超音波画像の様に地下を画像化(可視化)する方法が物理探査技術であり、これまで石油・鉱物資源あるいは地熱エネルギー探査などの資源探査に、最近ではダム・トンネルの建設、活断層・地滑りなどの防災、地下水汚染などの環境問題に適用されている。我々はさらに、地震が発生する地下を描き出すために物理探査、特に電磁探査法を適用している。
1962年に発生したマグニチュード(M ) 6.5の宮城県北部地震の震源地地域での地下の様子を解明するために、自然の電磁場変動を利用したMT(magneto-telluric, 地磁気地電流)法による調査を実施した。この地域では現在も1962年の地震の余震活動が続いている。図1は極磁気異常図1)の上に最近の地震活動を重ねた図である。中心に存在する高磁気異常体は、地表に露出していない花崗岩体であると推定され、地震は主にその中で発生している。その上に配置した17観測点において、周波数320から0.01HzのMT法調査を実施した。
MT法では、大地の電気の通しにくさの指標である電気抵抗率(比抵抗)の見掛けの値が、地表において各周波数毎に観測される。そしてその観測値を再現できるように、地下の比抵抗構造モデルを自動的に修正して行き、最終モデルが決定される(図2)。一般に岩石はほとんど電気を通さないが、その間隙に塩分濃度の高い水や粘土を含むと電気が流れ易くなり、比抵抗は下がる2)。地震は、地下10kmより深いところに存在する低比抵抗体(赤色の領域)を覆う様に発生していることが明瞭に把握できる。低比抵抗体には高塩濃度の流体が存在し、それが上昇し、高比抵抗を示す花崗岩体に既存の割れ目を通って侵入し地震を誘発しているのではないかと推測している3)。
現在さらに3次元的に地下構造を画像化できるよう研究開発を進めているところである4)。
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図1 極磁気異常図(コンター間隔は50nT)上のMT法観測点(▲)と微小地震分布(○) |
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| 図2 最終的な比抵抗構造モデル(図1の破線に沿った断面図) |
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● 1) 大熊茂雄 : 地質調査所月報,44巻,193-217 (1993).
● 2) 小川康雄 : 科学,72巻,2号,204-208 (2002).
● 3) Y. Mitsuhata, Y. Ogawa, M. Mishina, T. Kono, T. Yokokura and T. Uchida : Geophys. Res. Lett. 28, 23,4371-4374 (2001).
● 4) http://unit.aist.go.jp/georesenv/index.html
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