化石燃料資源の制約やそれらの大量消費によって引き起こした深刻な地球温暖化などの環境問題が注目される中、人類はクリーンで安全な新エネルギーの緊急な開発を余儀なくされている。無尽蔵な太陽光と水から、クリーンな燃料となる水素と酸素を直接製造する人工光合成技術とも考えられる技術は人類の夢技術の一つである。図1は、半導体光触媒を用いた水の直接分解による水素と酸素の生成原理を示している。光触媒水素製造の実用化を考えた場合、太陽光の利用は不可欠である。地表に降り注ぐ太陽光は、可視光の500nm 付近に放射の最大強度をもっており、可視光領域のエネルギー量は全太陽光の約43%である。一方、400nm以下の紫外線領域では5%にも満たない。しかし、今まで水を可視光で水素と酸素に分解できる光触媒は開発されていなかった。我々のグループは結晶物理学的な材料設計手法を用いて、可視光で水を分解できる新しい光触媒の探索を行ってきた。その結果、太陽光の約半分を占める可視光を用いて、水を水素と酸素に一段で分解できる光触媒の開発に世界で初めて成功した。開発した光触媒はNiをドープしたInTaO4系化合物である。InTaO4 系化合物はMonoclinic 型結晶構造で、空間群P2/C を持つ層状Wolframiteである。
図2は1.0wt% NiOx/ In0.9Ni0.1TaO4光触媒を用いて可視光照射下で水分解を検討したところ水素・酸素が2対1の量論比で生成した。420nm カット・オフ・フィルターを通してランプをオン・オフすることにより、触媒の可視光の応答性があることも確認された。通常の一段光励起システム(一つの光触媒で、図1)で水を可視光完全分解した世界で初めての例である。また、水素・酸素の生成速度はNi置換量0.1で最高になることが解った。これはNiに置換したIn1-xNixTaO4触媒の結晶性がx=0.1 までは安定しているためと考えられる。現状での変換効率は非常に低い(量子収率は402nmで0.66%)が、本研究が可視光利用の実用光触媒開発への糸口となることが期待される。





































