最近のゲノム解析の爆発的な進展に伴い、膨大な量の配列情報が蓄積しつつある。多くの人が予想しているように、人ゲノムの配列の内本当に意味のある配列は一握りであり、その他は、ほとんど無駄な配列であるように思われる。何が無駄で何が意味がある配列であるかを区別する方法の開発が必要であろう。
ところが、この問題に対する一般的解決は非常に困難である。なぜならば、DNA配列をアミノ酸配列にまで変換し理解する技術は完成しているが、アミノ酸配列に含まれる情報が如何にして蛋白質の立体構造情報として生かされ、更に蛋白質の機能へと発現していくのかの原理解明が完成していないからである。それだけでなく、ある与えられた配列が、構造形成できる(つまり、意味のある配列である)のか否かに対する答えを導くのさえ難しいのが現状である。
我々は、アミノ酸配列は大きく分けて構造形成できるもの(意味のあるもの)とできないもの(意味のないもの)に分類できることから、構造形成できるための条件とは何であるかを考え、構造形成できる配列には、構造形成に必須な配列単位(これをフォールディングエレメントと名付けた)がそろうことが必要であると考え、この考えに基づき、円順列変異解析法を考案した1),2)。さらに、この方法を、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)に適用し、DHFRのフォールディングエレメントを全て抽出することに成功した3)。我々が、決定したフォールディングエレメントは、結晶構造解析等構造生物学的アプローチで抽出される構造エレメントとは必ずしも一致せず、現在行われている構造論アプローチだけでは、問題が解決しそうにないことを意味している。
我々の結果は、ポストゲノム研究においては、現在の構造生物学的アプローチだけでは不十分であることを示すと共に、フォールディング工学などによる蛋白質の構造構築原理の早急な解明が最重要課題の一つであることを示すものである4)。円順列変異解析で明らかにしたジヒドロ葉酸還元酵素配列中(下の図)のフォールディングエレメント(上及び下の図でそれぞれ色づけした部分)と結晶構造解析により明らかにされた構造エレメントを比較した(上の図でリボン及び矢印で示した部分)ところ、それほど良い一致が見られなかった。






































