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セルロースやキチン質に代表される天然高分子バイオ マスは、一年間に地球上で1千億トン以上の膨大な生産 量を誇っており、生分解性などの特徴がある。しかしセ ルロースやキチン質は特殊な溶剤にしか溶けないため成 型性に問題があり、工業利用の範囲が狭められている。 天然高分子を対象とした新しい成型技術を確立できれば、 波及効果の大きい産業基盤技術のひとつになると考えら れる。 当所では、天然高分子の微粒子を熱プレスして成型体 を得る粉末成型法について研究を進めている。セルロー スやキチン質などの天然高分子は靭性が大きいことと、 これら天然高分子に共通の水素結合の存在のため、微粒 子を製造することが困難とされている。そこでまず、乾 燥微粒子の容易な製造技術を確立し、さらにそれらの微 粒子の熱プレス成型について検討を行った。
セルロースやキチン質はそのままではボールミルなど の粉砕機による微粒子化が困難であり、凍結等の手段に よって微粒子までの粉砕が可能になる。しかし、凍結粉 砕法はコストが高いため、応用用途が限られていた。当 所では、揮発性の媒体を少量乾燥体に吸着させると、凍 結することなく容易にボールミル粉砕が可能であること を見い出した。このような揮発性の媒体としてはアセト ンが最も優れている。アセトンをセルロースに対して約 20%添加した場合、10μm以下のセルロース微粒子が再 現よく得られる。 アセトンの添加によって粉砕が容易になる理由として、 この媒体が天然高分子を脆くするとともに粉砕中に生成 した微粒子が水素結合によって凝集することを防ぐため と考えられる。この方法を用いると、天然高分子の乾燥 微粒子が安価に容易に得られる。この方法は、セルロー スやキチン質以外の天然高分子にも適用できる。得られ た微粒子は凍結法などと比較して、結晶化度が低くほと んど非晶質のものであった。
得られたセルロース微粒子は非晶質でまた10ミクロン 以下と細かいため反応性に富み、条件を選べば従来不可 能であった熱プレスによる粉末成型でセルロース透明板 を製造することができる。粉末成型時に加熱温度(150 ℃)やプレス圧力(500kgflcm3)を選ぶほかに、約4% の水分をセルロースに添加することで、セルロース成型 板の透明性が増す。これは水分の添加でセルロース分子 鎖間や微粒子間に水素結合が再形成されやすくなり、微 粒子間が密接に結合したためと思われる。 現在、セルロース高分子鎖間に形成される水素結合の 開裂及び再結合メカニズムの研究を進めている。このメ カニズムが解明されると、セルロース粉体の擬集過程を 制御できることから、単なる成型体にとどまらず速効固 化材、細孔形成による調湿機能材等数々の機能材料が開 発できると期待している。