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四工研ニュース

No.84 (1996-5) P.4


セルロースの微粒子成型をめざして

  1. 背景
  2. 微粒子製造の条件
  3. セルロース微粒子の熱プレスによる透明板成型
(海洋資源部 無機材料研究室)

背景

 セルロースやキチン質に代表される天然高分子バイオ マスは、一年間に地球上で1千億トン以上の膨大な生産 量を誇っており、生分解性などの特徴がある。しかしセ ルロースやキチン質は特殊な溶剤にしか溶けないため成 型性に問題があり、工業利用の範囲が狭められている。 天然高分子を対象とした新しい成型技術を確立できれば、 波及効果の大きい産業基盤技術のひとつになると考えら れる。  当所では、天然高分子の微粒子を熱プレスして成型体 を得る粉末成型法について研究を進めている。セルロー スやキチン質などの天然高分子は靭性が大きいことと、 これら天然高分子に共通の水素結合の存在のため、微粒 子を製造することが困難とされている。そこでまず、乾 燥微粒子の容易な製造技術を確立し、さらにそれらの微 粒子の熱プレス成型について検討を行った。

セルロースの超微粒子化成型法プロセス

微粒子製造の条件

 セルロースやキチン質はそのままではボールミルなど の粉砕機による微粒子化が困難であり、凍結等の手段に よって微粒子までの粉砕が可能になる。しかし、凍結粉 砕法はコストが高いため、応用用途が限られていた。当 所では、揮発性の媒体を少量乾燥体に吸着させると、凍 結することなく容易にボールミル粉砕が可能であること を見い出した。このような揮発性の媒体としてはアセト ンが最も優れている。アセトンをセルロースに対して約 20%添加した場合、10μm以下のセルロース微粒子が再 現よく得られる。  アセトンの添加によって粉砕が容易になる理由として、 この媒体が天然高分子を脆くするとともに粉砕中に生成 した微粒子が水素結合によって凝集することを防ぐため と考えられる。この方法を用いると、天然高分子の乾燥 微粒子が安価に容易に得られる。この方法は、セルロー スやキチン質以外の天然高分子にも適用できる。得られ た微粒子は凍結法などと比較して、結晶化度が低くほと んど非晶質のものであった。

セルロース微粒子の熱プレスによる透明板成型

 得られたセルロース微粒子は非晶質でまた10ミクロン 以下と細かいため反応性に富み、条件を選べば従来不可 能であった熱プレスによる粉末成型でセルロース透明板 を製造することができる。粉末成型時に加熱温度(150 ℃)やプレス圧力(500kgflcm3)を選ぶほかに、約4% の水分をセルロースに添加することで、セルロース成型 板の透明性が増す。これは水分の添加でセルロース分子 鎖間や微粒子間に水素結合が再形成されやすくなり、微 粒子間が密接に結合したためと思われる。  現在、セルロース高分子鎖間に形成される水素結合の 開裂及び再結合メカニズムの研究を進めている。このメ カニズムが解明されると、セルロース粉体の擬集過程を 制御できることから、単なる成型体にとどまらず速効固 化材、細孔形成による調湿機能材等数々の機能材料が開 発できると期待している。


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