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ダイヤモンドの硬さを凌ぐか?


−立方晶窒化炭素の世界初の合成−

極限反応部 藤原 修三、古賀 義紀


 工業技術院物質工学工業技術研究所(所長:小野 修一郎)では、今回グラファイトへの窒素イオン照射による立方晶窒化炭素の合成に世界で最初に成功した。1989年カリフォルニア大学のコーヘン教授らによりコンピューターを使ったモデル実験により窒化炭素は、ダイヤモンドの硬度を凌駕することが理論的に最初に予測されたものです。以来世界中の研究者が合成に挑戦をしてます。彼らが最初に予測した窒化炭素はベータ相という結晶相でしたが、今回成功したものは、立方晶という全く新しい結晶相の窒化炭素です。ダイヤモンドは炭素だけの結晶ですが、この物質の特徴は、ダイヤモンドの炭素が一部窒素で置き換えられたもので、炭素と窒素の比が3:4からなる結晶で、全体としてダイヤモンドより強い結合を作り出しています。これは、窒化炭素の炭素−窒素の結合距離がダイヤモンドにおける炭素−炭素結合距離に比べ短くなったことによると考えられます。立方晶窒化炭素も今年の1月、米国高圧地球物理研究所のテーターらによりコンピュターによる理論計算がなされダイヤモンドの硬さにくらべ立方晶窒化炭素の硬さが優れていることが予測されてました。またこの物質は硬さだけでなく他の性質でもダイヤモンドを超える可能性をもっております。例えば、熱伝導率が高い、音速が早い、熱安定性が高い、放射線に強いなどです。
 窒化炭素は、結晶の硬さ、化学的安定性、熱伝導性が高いことからハードコーティング材料、ヒートシンク材料、光通信用デバイスなどへの応用や工業用ダイヤモンドに置き換わる応用が広く考えられます。現在、窒化炭素の合成をめぐって世界の研究者がホットな競争が続いています。合い言葉は、『誰が最初にダイヤモンドより硬い物質を作り、それを実証するか?』です。

(解説)
  1.合成法と電子線観測解析
 物質研では窒素分子イオンを高配向性グラファイト(HOPG)表面に衝突させて、窒素と炭素からなる極めて硬い新物質を作ることに成功しました。サイズは50nm(1ナノメーターは10-9m)程度ですが、これまで予測されてきたベータ構造とも異なり、立方晶と呼ばれる構造でした。ベータ構造と同様にまだ大量に合成できていません。電子顕微鏡で観察するために、イオン照射した試料をめのう乳鉢の中で細かくつぶしてましたら、試料中にめのうが混入してしまいました。めのうの主成分は酸化ケイ素ですが、硬さは硬質ガラス程度であることが知られています。つまり、新しく合成された試料が、相当硬いものであることが想像できます。
電子顕微鏡観測の解析から、炭素と窒素のみから構成されている立方晶窒化炭素であることが、判明しました。その格子定数は、0.34nmであり、テーターらにより計算された値(0.34232nm)と極めて良い一致を得ました。
  ただし、窒化炭素(C3N4)の組成比はまだ合成された量が少ないため、確認されてません。今後大量合成による組成の正確な確認を行う必要があります。

  2.内外の開発状況
   MITのリーバー教授らによるグラファイトのレーザーアブレーションと窒素のRF放電によるβ相窒化炭素の報告が1993年に最初になされ、透過電子顕微鏡による結晶の確認がなされました。また、1994年にカリフォルニア大学のコーヘン教授らにより窒素のRF放電によるグラファイトのスパッタリングによる薄膜生成からβ相窒化炭素のRBS,透過電子顕微鏡などによる観測に成功しました。いづれもβ相窒化炭素の確認に限られています。
 一方、立方晶の窒化炭素の観測成功例は、我々の報告を除いて、国内、国外を含めこれまでにどこにもありません。


図 閃亜鉛構造のC3N4


図 窒素イオン照射後の黒鉛のゼロロス像


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