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アルミニウムの生体内蓄積と局所観察

計測化学部 有機分析研究室 高津章子
計測化学部 無機分析研究室 内海 昭


 生体系では鉄、亜鉛、銅などの必須元素はもとより、アルミニウム、バリウム、ストロンチウムなどの食品を通じて偶然に体内に取り込まれたいわゆる随伴元素など、すべての微量元素はある一定濃度に存在している。これらの蓄積濃度は酵素、蛋白質、ホルモンなどによって微妙に調節されていると考えられているが、最近の研究では、その体内蓄積濃度が年齢、健康状態、栄養状態等に依存して大きく変動する事が明らかにされつつある。
 アルミニウムは地殻に多量に存在する元素でありながら、一般に、生物への影響は少ない金属とされてきたが、長期血液透析患者にアルミニウムによる脳症や骨軟化症が発現したことから、アルミニウムの生体内蓄積、特にアルツハイマー病との関連や、酸性雨の影響により土壌から溶出するアルミニウムの問題が議論の的となっている。こうした問題の解決のためには、アルミニウムが生体組織のどの部分に、どのくらいの量、どんな形で存在しているかを調べることが重要であり、そのためには生体組織の微小部分を対象とした非破壊分析法が有効である。
 従来よりアルミニウムの組織染色にはアルミノン、クロムアズロールSなどの呈色試薬が用いられてきたが、これらの試薬はアルミニウムのみならず、共存する鉄、銅などとも類似の有色錯体を形成するため、微量のアルミニウムのみを選択的に識別することは困難であった。そこで、当所では、アルミニウムと選択的に結合することによって強い蛍光を発するo,p,o-トリヒドロキシアゾ化合物型のルモガリオン誘導体を用い、組織切片中のアルミニウムの局所分布を直接観察することに成功した。
 実験はアルミニウム剤を経口および非経口(腹腔内注射)投与したラットの骨組織を摘出し、作成した切片を試料とした。これらの切片をルモガリオン濃度2×10−5M、バッファーのpH 4.0、液温65℃、反応時間2時間の条件で染色し、励起光源としてアルゴンイオンレーザー(波長 488nm)を用いる共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。
 写真に、正常腎および、5/6腎摘出(人工的に腎不全を引き起こしたもの)ラットの骨組織の蛍光像を示した。アルミニウム剤腹腔内投与ラット及び腎摘出ラット群の骨組織に強い呈色がみられ、アルミニウムの蓄積が認められた。蓄積部位は骨形成過程にある類骨に多くみられた。
 このように、ルモガリオンは生体組織内に局在するアルミニウムの検出に有用な呈色試薬と考えられる。この方法によりアルミニウムの生体組織における局所分析が可能であり、他の分析データとの比較等からアルミニウムの生体内蓄積および動態についてさらに検討を進める予定である。また、この方法の特徴の一つは、コントロール群(非アルミニウム投与)に存在するアルミニウムは呈色を示さないのに対して、代謝異常などによって蓄積された骨中アルミニウムが有染性を示していることである。骨軟化症ではアルミニウム有染性の有無とよく相関すると考えられるため、本法は臨床的なアルミニウム骨症の診断に際しても有用と思われる。


アルミニウム剤を投与した正常腎および5/6腎摘出ラットの骨組織の蛍光像
A コントロール、非アルミニウム投与(骨中Al濃度 3.5μg/g)
B 正常腎、非経口投与(骨中Al濃度 11.0μg/g)
C 5/6腎摘出、非経口投与(骨中Al濃度 22.0μg/g)


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