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ダンテズ・ピークFAQ'S
(frequently asked questions)

アメリカ地質調査所(USGS)
火山災害プログラム
1997年2月10日

ダンテズ・ピーク(ユニバーサル映画作製の新しい火山災害映画)は,アメリカ国内の活火山の近くの町が直面している現実をドラマ化した映画です. この映画は,アラスカ,ブリティッシュコロンビア,ワシントン,オレゴン,北カリフォルニア各州に実在する何十もの火山をモデルにした想像上の火山とその再活動を通して,アメリカ地質調査所の科学者と地方自治体職員の任務を描き出しています. この文書はフィクションと事実とを区別して,映画の内容と,USGSの火山災害低減に対する役割に関するよくある質問とその回答をまとめたものです.

火山と火山研究者に関する一般的な質問

Q:科学者は本当に火山噴火を予期できるのですか?

A:多くの場合は可能です.しかし信頼できる予測は地質学的によく調べられた火山だけです.過去の噴火で噴き出した岩石や火山灰などの堆積物を調べることで,火山研究者は火山の歴史をかなりの精度で組み立てることができます.こういう研究で将来起こるかもしれない噴火の一般的な予想をすることができます.これは過去に起きたことは,もちろんいつでもそうではないにしろ,将来を解く道標になるからです.例えば,セントヘレンズ山を1970年代に研究していたUSGSの研究者は,セントヘンレンズ山が過去数千年間,全カスケード地域で最も活発な活動をしていることを知っていました.このことからセントヘレンズ山がカスケード地域で次に(おそらく西暦2000年までに)噴火する火山であると予測されていました.1980 年に火山が123年振りに噴火したとき,彼らの調査の仕事は清算されたのです.

Q:噴火の時期,場所,様式を特定した予測は可能ですか?

A:いくつかの場合は可能です.しかし特定した予測にはまた別の情報が必要です.地震計や他の敏感な観測用機械を使って,USGSの研究者はアメリカ国内の36個以上の危険な火山を監視しています.なにかのトラブルの最初のきざしがあれば,映画の中で描かれていたように,監視体制を強化します.このようにして活動的な火山の信号を捉えることは,災害予測や将来の活動の時間や場所,活動様式などのより確かな声明を出すことに繋がります.

例えば,USGSの研究者は1980年から1986年にかけて,セントヘレンズ山の12回以上の溶岩ドーム形成をよりいっそう正確に日付まで予測しました.また1991年には,ここ80年間で最大級の噴火であるフィリピンのピナツボ火山の噴火での正確な予測は,何千もの人命と何百万ドルもの財産を救うことができました.

Q:USGSは実在するのですか?噴火の警告をするのですか?

A:はい.アメリカ合衆国地質調査所は議会によって1879年に創設され,合衆国に生物学的,地質学的,水文学的,地形学的な情報を提供しています.USGSはアメリカ市民と地方自治体へ火山災害を含む地質学的な災害への適時の警報を出す権限を議会から与えられています.この使命は,ワシントン州,アラスカ州,ハワイ州,カリフォルニア州にある各火山観測所をまとめるUSGS火山災害プログラムで果たされるほか,アメリカ国内の他地域の火山ならびに火山プロセスの研究を支援しています.
訳者注:日本にも通産省工業技術院地質調査所というGeological Surveyがあり,火山の地質調査などを行っています.日本における定常的な火山噴火監視は気象庁が,海底火山については海上保安庁水路部がそれぞれ行います.火山噴火予知連絡会は気象庁長官の諮問機関で,メンバーは文部省,国土庁,科学技術庁などの行政官庁,地質調査所を始め国土地理院,防災科学研究所などの国立研究機関,ならびに東京大学地震研究所,京都大学防災研究所などの大学研究者からなります.)

Q:どうやってUSGSは噴火警報をだすのですか?

A:USGSの警報システムは,周辺の地域や航空機への火山災害の種類や切迫度に応じて変わります.危機が始まる前には,私達は災害危険度マップや,噴火頻度,予想される災害の範囲を自治体,土地利用計画者,緊急事態対処機関へ提供します.USGSは連邦航空局(FAA),国立気象サービス(NWS)と共に,危険な火山灰を含んだ噴煙情報を航空会社のパイロットに適時に提供しています.地域社会に危機が迫ったときには,自治体に対して土地利用や避難の決定を助ける災害情報を直接提供します.

映画と違って,警報はUSGSの対応チームメンバーによってすべての情報の分析と注意深い検討を経た後になされます.私達のゴールは自然現象を自然災害にすることを防ぐことなのです.
訳者注:日本では噴火予知連などで各研究機関のデータを持ちより行い,活動状況の評価をコメントとして出すことがあります.火山活動の情報を提供するのは気象庁の各地方気象台・測候所で,それを元に各自治体が対処することとなっています.)

Q:アメリカ国内にはいくつ活火山がありますか?

A:アメリカ国内には約65の活火山があると研究者は考えています.これらのほとんどがアラスカにあり,ほとんど毎年噴火が起きています.その他の火山は,カスケード地方(ワシントン州,オレゴン州,北カリフォルニア)や,ハワイ州のハワイ島,マウイ島にあります.ハワイ島のキラウエア火山は地球上で最も活動的な火山の一つです.この火山は1983年からほとんど連続的に噴火しているのです!
(訳者注:日本では活火山の定義として「最近2000年間に噴火した証拠がある火山」「噴気活動が盛んな火山」があり,気象庁により86火山が活火山として認定されています.国際的には最近1万年間に噴火した火山を指すことがあり,その場合約120の火山が該当します.)

Q:地球上には活火山はいくつくらいあるのですか?

A:海洋底に連なっている火山を除くと,約1500の噴火する可能性がある火山があります.そのうちかなりの火山が太平洋を取りまく,いわゆる「火の環」と呼ばれる地域にあります.アメリカではカスケード地域の火山とアラスカの火山(アリューシャン火山列)が「火の環」の一部です.一方ハワイは「火の環」のほぼ中心に位置する,ホットスポット火山です.
訳者注:日本はここでいう「火の環」の一部です.)

Q:カスケード地域の火山で主なものは何ですか?

A:ワシントン州のMt. Baker,Glacier Peak,Mt. Rainier,Mt. St. Helens,Mt. Adams,オレゴン州のMt. Hood,Mt. Jefferson,Three Sisters,Newberry Volcano,Crater Lake,McLoughlin,北カリフォルニアのMedicine Lake,Mt. Shasta,Lassen volcanic fieldなどです.

Q:カスケードの火山で次に噴火するのはどの火山ですか?

A:確実なことは誰にもわかりません.ただこれらのうち7つの火山が過去200年間に噴火しています.Mt. St. Helens (1800-1857 と 1980-1986), Lassen Peak (1914-1917), Mt. Baker, Glacier Peak, Mt. Rainier, Mt. Hood, それにMt. Shastaです.これらのうちどれもが次に噴火するかもしれません.とはいえセントヘレンズ山がもっとも可能性は高いでしょう.または次の噴火は完全に新しい火口から起きるかもしれません.ここ数千年の間にはカスケード地域全域にわたって何十という新しい火口から噴火が起きています.


映画は事実?それともフィクション?

Q:映画での火山噴火の描写は本当ですか?

A:全部ではないですがかなりの部分で,映画の中で描かれた火山災害,特に噴火の際の並外れた力の描写に関しては実際のものに近い描写になっています.カスケード,アラスカの成層火山は爆発的な噴火をします.そして映画で描かれたような,火砕流や大量の火山灰噴煙,火山泥流を産み出します.一方,これらの火山の溶岩流は映画の中の流れやすい溶岩流と違って,厚くてゆっくりと流れます.流れやすい速い玄武岩溶岩流はハワイの火山では特徴的です.実際の噴火は映画の中で描かれたもの以上,あるいはそれ以下のときもありますし,影響がおよぶ範囲も同じようにもっと狭いことも広いこともあります.
訳者注:日本では流れやすい玄武岩質溶岩を流す火山は,三宅島,伊豆大島,富士山などがあります.桜島や浅間山などはカスケードの火山と同じように安山岩質の厚い溶岩流がゆっくりと流れ下ります.)

Q:映画のように噴火は本当にヘリコプターに危険なのですか?他の航空機にはどうでしょう?

A:はい.火山灰を含む噴煙と航空機の遭遇は重大な関心事です.ジェットエンジンなどの航空器材は,噴火している火山から風下側に危険な濃度で数百kmも漂うことができる細かい研磨材のような火山灰によってダメージを受けやすいのです.

過去15年間の間に,少なくとも80機の航空機が火山灰噴煙と偶然遭遇し,そのうち6つのケースでジェットエンジンが一時的に推進力を失っています.USGSや連邦航空局,国立気象局を含む,国際的コンソーシアムは火山灰を放出する火山の監視や噴煙の追跡を通して,将来の航空機と噴煙の遭遇の可能性を減らそうとしています.
訳者注:日本ではエンジン停止などの大きな事故はおきてはいませんが,鹿児島空港に着陸する飛行機に桜島の小さな噴石が当たるという事故はありました.現在桜島の傾斜観測による噴火予測と風向きから警報が出されるシステムがあります.)

Q:活火山の近くの温泉の温度が入浴客を傷つけるほど早く上昇することはあるのですか?

A:温度の変化はありえますし,実際に起こりますが,普通は映画に描かれたよりはゆっくりと起こります.実際には火山活動の間には,温泉の温度は上がることもあるし,下がることも,また変わらないこともあります.温度が上昇するときには,映画のように数秒ではなくて,普通は数日あるいは数週間かかります.

まれに地震によって高温地下水システムが破壊されて温泉の温度が変わることがあります.地震によって一時的に温泉の湧出量が増加することがあり,時々間欠泉のような活動になって入浴客に危険なことがあります.
訳者注:日本では草津温泉で入浴客が死亡したという江戸時代の記録がありますが,火山ガスによるものなど別の要因かもしれず,本当かどうかよくわかりません.)

Q:火山噴火に伴う地震は建物や道路を破壊するほど大きいことがありますか?

A:普通はありません.火山噴火に伴う地震はマグニチュード5を越えることはあまりありません.このくらいの小さな地震は映画の中で破壊された建物や家屋,道路のような建造物を破壊するほど大きくはないのです.セントヘレンズ山の1980年の噴火では,最も大きな地震はM5で,木を傾けたり,建物に被害を与えたりはしましたが,破壊までは至っていません.1991年のフィリピン・ピナツボ火山の巨大な噴火では,何十という小さな地震(M3からM5)を何千人もの人々が感じました.たくさんの家屋が倒れましたが,それは地震の揺れによるものではありませんでした.これは屋根に積もった火山灰が台風によって湿って重くなって押し潰したのです.

テクトニックな断層活動によるもっと強い地震が火山の近くで起きることがあります.例えば1980年にはロングバレーカルデラでM6の地震が,1975年にはハワイのキラウエア火山でM7.2の地震が起きています.ロングバレーカルデラでは噴火は起きませんでしたが,1980年以来その地域は地震活動が続いています.
訳者注:日本では大正3年の桜島の噴火に伴い,M7.1の地震が起きたことがあります.)

Q:火山が活発化して上水道の水源が汚染されることがありますか?

A:はい.しかし映画のように急には起こらないでしょう.水源が火山の地下水や火山灰で覆われた水流から直接供給されているときには,悪臭ガスや細かい火山灰などの堆積物で汚染されることがあります.二酸化硫黄などの火山性ガスが地下水に溶けこむと,水は酸性になります.しかし,卵が腐ったような「硫黄の匂い」は硫化水素の匂いです.

Q:火山研究者は動いている溶岩流を横切って車で走ったりするのですか?

A:いいえ.たとえ表面の薄い部分が固結していても,流れている溶岩流の上を横切るのは間違いなくひどい目にあうことになります.900度以上の新鮮な溶岩の上ではタイヤをすぐに溶かしてしまいすし,ガソリンタンクにすぐ引火してしまうでしょう.そして車が溶岩の中でにっちもさっちも行かなくなったら…その後どうなるかは言うまでもないでしょう.

Q:火山からの二酸化炭素ガスは木や野生生物を殺したりするのですか?

A:はい.世界のいくつかの火山では,マグマから放出される二酸化炭素ガスが植物を枯らせるほど土壌に集まることがありますし,窪地にたまって動物を窒息させることもあります.カリフォルニア州のマンモス山では1989年以来,約40ヘクタールほどの範囲の植物を枯らせています.またこの地域にはいった人達は,小屋や地下の洞穴に入ると,時々呼吸困難の兆候に悩まされました.USGSの研究者達はこの二酸化炭素ガスがマンモス山の地下にあるマグマから放出されていることを突き止めました.マグマそのものは地表に向かって動いてはいませんが,USGSでは状況を注意深く監視しています.
訳者注:日本でも雲仙火山で1975年に二酸化炭素により動物が死んでいるのが見つかったことがあります.
二酸化炭素以外のガスとして硫化水素,二酸化硫黄などのガスが被害をもたらすことがあります.草津白根山では1971,1976年に硫化水素による死者が出ています.また1997年7月にも八甲田山で二酸化炭素ガスによる死者が出ています.(97.7.13追加,7.21修正))

Q:火山が急に活発化して,最初の前兆から1週間以内に,噴火することがあるのですか?

A:はい.1980年3月27日のセントヘレンズ山の最初の水蒸気爆発は,地震活動の増加という形で,わずか7日前に予期されました.噴火のクライマックスは5月18日でそのあと7週間続きました.1989年12月13日のアラスカ州のリダウト火山の噴火は,わずか24時間前に地震活動が活発化しました. しかし,ほかの多くの火山では噴火の数ヵ月から数年前から騒がしくなり始めることが多いのです.また騒がしくなっても結局噴火せずに終わることも時々あるのです.

Q:USGSは火山観測にロボットを使っているのですか?

A:いいえ.観測や測定は経験を積んだ科学者によって,火山の周りに配置した機器から無線や人工衛星経由で送られてくる重要な観測データを使って行われます.これらの観測機器は地震計,傾斜計,GPS受信機,ガスセンサー,泥流センサー,温度センサーなどです.

NASAは「ダンテ」という名前のロボットを,南極のエレバス山とアラスカのスパー山でテストした事があります.USGSでは少なくとも地球上では経験を積んだ火山研究者が危険な火山を監視する最も良い,かつ最も経済的な方法であると考えています.

Q:火山が大きな爆発的な噴火と流動性に富んだ溶岩流を同時に出すことがありますか?

A:普通はありません.ひとつの噴火の間には溶岩流と火山灰を同時に放出することは時々はあります.映画に出てきたような赤い高温の溶岩噴泉と溶岩流(主人公が車で横切ったもの)は玄武岩という流れやすいマグマの特徴です.対照的に,別のシーンでの爆発的な噴火による灰色の噴煙と火砕流は,安山岩やデイサイト,流紋岩のようなもっと粘り気の大きなマグマの特徴です.ひとつの火山が同時に広い化学組成範囲のマグマを噴出することは,そうありません.

Q:火山の近くの湖が人々に危険なほど酸性になることがありますか?

A:はい.火山の頂上付近にある火口湖はもっとも酸性度が大きくなり,pHが0.1以下になることがあります.それに比べると普通の湖の水は中性(pHが7.0)付近です.メキシコのエルチチョン火山の火口湖は1983年にpH 0.5.ピナツボ山の火口湖は1992年にpH 1.9でした.これらの酸性の湖水は人間の皮膚にやけどを負わせることはできますが,速く金属を溶かすことはできそうにはありません.そのような湖水に溶けて酸性にするマグマからのガスは,二酸化炭素,二酸化硫黄,硫化水素,塩化水素,フッ化水素などがあります.ですが映画の中で描かれたような,アルミニウム製のボートを分の単位で溶かすようなことは非現実的です.
訳者注:草津白根山の山頂部お釜火口のpHは1程度です.)


噴火前兆に付いての質問

火山が噴火する前に,マグマは火山の下の硬い岩石を無理矢理上に向かって進まなければなりません.このために地面は持ち上げられたり,岩石が横へ押しやられたり壊れたりするときの振動で揺れたりします.同時により圧力が低いところへ上がってきたため,マグマからガスが放出されます.これらの現象−地殻変動,地震,火山性ガスの変動−は研究者達が,活発化した火山に気がつく印になり,またこれから起きることの予測の鍵になります.

Q:噴火の前に起きる異常な現象にはどんなものがありますか?

A:よくある火山活動の活発化を示す予兆には,火山の下の地震の回数・強さの増加,火山性微動,地殻の膨張・沈降・割れ目,噴気の増加または小さな水蒸気爆発,積雪・氷の融解,噴気や温泉の変化や新しい出現,そしてマグマ性ガスの放出量の増加などがあります.火山研究者はこれらの異常の一部の頻度や強さを監視することで,火山活動の評価を行います.

Q:火山性微動とはなんですか?地震とはどう違うのですか?

A:微動は火山性地震と同じく地面の揺れの一種ですが,より継続時間が長く,地震と違って同じ振幅が長く続きます.火山性微動は数分から数日続くことがあります.火山性微動はおそらく狭い割れ目をマグマが通るときや,火山体の中の圧力がかかった流体が沸騰したり脈動したり,噴気帯から高圧のガスや水蒸気が噴出したりして起きると考えられています.

Q:火山では普通とは違った地震が起きるのですか?

A:はい.噴火しそうな火山ではいろいろな種類の地震が火山では起きます.これらのなかには,断層や割れ目が壊れることで起きる構造性の地震も含まれます.別のよく起こる地震には長周期地震や火山性地震があります.これらの地震は発泡したマグマが火山の下で動くときに起こります.映画の中で,主人公が火山性地震を感じたと言うシーンがあります.実際には構造性の地震と火山性の地震の違いはかなり微妙で,地震計を使ってやっと区別できるものです.

Q:火山から放出されるガスにはどんな種類がありますか?

A:火山から放出されている噴気の大部分は水蒸気です.水蒸気は火山活動が静かなときにでも,高温の内部から放出されています.しかしマグマが火山の下に貫入して,地下水を熱すると,水蒸気の量は劇的に増加します.マグマからは二酸化炭素,硫化水素(腐った卵の匂いがします)も放出されますが,水にほとんど溶けないためこれらのガスも地表に現れます.火山体の中の地下水が乾いてなくなると,水に溶けやすいガスも地表に現れるようになり,いよいよ重大な状況になってきたことを知らせてくれます.これらのガスには二酸化硫黄や,塩化水素やフッ化水素のようなハロゲンガスがあります.

Q:アメリカには今騒がしい火山がありますか?

A:いくつかあります.1989年のカリフォルニア州マンモス山の下で起きた群発地震のあと,大量の二酸化炭素ガスがこの火山の下から出てくるようになりました.二酸化炭素ガスは植物を枯らせたほか,火山の近くのキャンプ場が危険になりました.USGSはアメリカ森林サービスと協力し,二酸化炭素ガスの放出と地震活動を監視して,災害情報を公表しています.

1996年5月以来,アラスカ州のクック入り江地域のイリアムナ火山(Iliamna Volcano)で地震活動が活発化したのが観測されました.8月と10月の空中からの観測で二酸化炭素の放出が増えていることがわかりました.また二酸化硫黄もわずかに増えていることも観測されています.USGSはアラスカ大学フェアバンクス地球物理研究所,アラスカ地質地球物理調査局と協力してUSGSアラスカ火山観測所でイリアムナ火山の監視を続けています.

またこれもアラスカですが,1912年に巨大な噴火を起こし「千煙の谷(the Valley of Ten Thousand Smokes)」を作ったカトマイ地域でも,ここ最近小さな群発地震活動が起きています.パブロフ火山は1996年9月から散発的に噴火していて,落ち着きがないままです.

ハワイでは地球上で最も大きな火山体であるマウナロアがゆっくりと膨張していて,1984年の最後の噴火以来地震活動が続いています.

ワイオミング州の北西部,地球上でもっとも大きな火山地域のひとつであるイエローストーンでは,すばらしい熱水活動(間欠泉,温泉,泥火山),頻繁な地震活動,そして大きな地殻変動は私達に将来の噴火の可能性を思い起こさせます.もっとも,すぐにイエローストーンで噴火が起きる可能性は他のアメリカ西部の火山より低いのですが.
(訳者注:日本で最近1年程の間に噴火した火山は桜島,諏訪之瀬島,九重山,北海道駒ヶ岳,雌阿寒岳などがあります.)

火山観測についての質問

火山の活動開始あるいは再開を予測するために,火山研究者はマグマの動きや圧力による変化や,それに伴うマグマ周辺の熱水系の変化を監視します.映画の中で描かれるように,マグマが地表に近づくと群発地震が起こったり,火山の山腹が膨張したり,沈降したり,割れ目ができたり,火山から放出されるガスの量や種類が変化します.USGSはワシントン州,オレゴン州,カリフォルニア州,ハワイ州,アラスカ州,ワイオミング州(イエローストーン)で,異常を探知するために常に監視をしています.

Q:USGSは緊急に火山災害の不安に答える火山研究者のチームを持っていますか?

A:はい.USGS火山災害チームは火山災害評価,観測,情報普及,火山緊急事態対処のすべての分野の専門家から構成されます.映画で描かれたように,USGSの科学者グループはアメリカ国内のすべての潜在的な災害の可能性がある火山に対応するでしょう.

Q:USGSは外国の緊急火山対応チームを持っているのですか?

A:はい.そのようなチームは火山災害援助プログラム(Volcano Disaster Assistance Program,VDAP)の一部として,USGSによって行われます.このチームは,1985年の23000人以上が犠牲になったコロンビアのネバドデルルイズ火山の噴火のあとに,アメリカ国務省の海外災害援助事務所(U.S.Office of Foreign Disaster Assistance,OFDA)と共同で設立されました.OFDAを通して対象国から援助の要請があると,VDAPの科学者は火山性異常の性格や起こりうることの可能性の検討を行います.VDAPはここ10年間に12以上の国々で火山緊急事態に対処しました.

他国の人々を安全な場所に助け出すことに加えて,VDAPの国際的な活動は,アメリカ国内の火山災害の低減にも役立っています.つまり,VDAPを通して,私達は将来西アメリカで起こりうる危機対処の助けになる経験を積むことができます.そしてアメリカ国内の火山も理解するのに重要な,前兆現象のデータを集めることもできるのです.

Q:USGSはアメリカの火山をどのように監視しているのですか?

A:差し迫った噴火の最初の信号のひとつは,しばしば火山の下で起きる地震活動の微妙な変化です.USGSは大学や州機関と協力して,火山周辺の地震計観測網を使って地震活動を監視しています.異常な活動が感知されると,噴火が近いかどうかの判断のために,より多くの地震計やほかの観測機器が対応チームによって設置されます.

Q:どうやって地震はモニターされるのですか?

A:データを連続的に無線で中央記録所(観測基地)に送る地震計を設置し,科学者は火山近くの地震の大きさや場所を決定します.長周期地震や火山性微動のような火山活動に伴う種類の地震を探すのです.火山の下の地震の数や大きさの増加は多くの場合噴火が近いことを意味します.

Q:どうやって地殻変動を観測するのですか?

A:地殻変動(膨張,沈降,割れ目)は光波測距(EDM),GPS,水準測量,歪み計,傾斜計などのいろいろな方法で観測されます.EDMはレーザー光線を使ってベンチマーク間の距離を精密にくり返し測ります.GPSは,地球を回る人工衛星を使って,位置の決定と移動を観測するのに使います.歪み計と傾斜計は地表のごく小さな変形を監視するのに使われます.

Q:火山性ガスはどうやって測定するのですか?

A:二酸化硫黄と二酸化炭素の観測機器は,毎日放出されているガスの量を決めるために,航空機に搭載できます.またこれらの機器は地上からも使用することができます.映画の中で,火山からの二酸化硫黄放出量の観測のための相関スペクトロメーター(COSPEC)がヘリコプターに搭載されていました.二酸化炭素の観測機器は,火山体に設置して,観測基地に無線でデータを連続して送ることができます.また火山の噴煙中の二酸化硫黄は,人工衛星に搭載された観測機器からも測定することができます.

Q:火山泥流は監視できますか?

A:映画の中に出てくる,泥と岩石,丸太や他の破片を含む激流は,まとめて泥流とかデブリフロー,またはインドネシアの言葉でラハール(lahar)と呼ばれます.音響泥流モニターは火山から流れ下る谷の近くに設置され,近づいてくる泥流の警報を出すことができます.このシステムは泥流によって起きる振動を感じて,観測基地へ無線を通じて警報を送ります.
訳者注:日本では土石流センサーとしてワイヤータイプのものがよく使われます.)

Q:他にはどんな観測を火山でするのですか?

A:経験豊かな火山研究者によるフィールドでの観察は,もっと洗練された観測手段とともに,火山監視システムを完成させます.映画の中で描かれたように,フィールドでの観察には水温監視,pH測定や割れ目の測定,岩石の崩落などの観察が含まれます.経験豊かな観測者は即座に様々なデータを統一的に解釈して,火山活動の意味を評価する単純な観測法を作ることができます.火山の振る舞いを予測するとき,よく訓練された,経験豊富な観察者に代わるものはありません.

火山災害についての質問

映画の中で,噴火した火山は近くの住民を,火山灰噴煙,落ちてくる放出岩塊,火砕流,溶岩流,そしてラハールによる洪水の危険にさらします.これらの災害は北西太平洋岸やアラスカの雪や氷河を頂いた成層火山によく見られるものです.1980年以来,世界中の火山活動による死者は29000人以上になります.大部分の犠牲者はラハールと火砕流によるものです.数百人の犠牲者は火山灰の重みで建物が潰されたことによるものです.

Q:どんな種類の火山災害が映画の中で描かれましたか?またそれらは実際の火山災害ではどんな役割をしていますか?

A:デブリフロー,あるいはラハールは映画の中で火山研究者が流されたような,泥や岩石などの破片と水の混濁した流れです.ラハールは固体の破片と水,溶けた雪や氷が混合することで発生します. 1980年にセントヘレンズ山で発生したラハールは,家屋や橋,材木運搬用のトラックなどを破壊しました.また有史以前のカスケード地域の火山周辺の谷を氾濫させました.1985年のコロンビアのネバドデルルイズ火山で発生したラハールは23000人以上の犠牲者を出しています.レーニエ山では,ラハールが明らかに噴火活動そのものやそれが引き金になったのではない地滑りによって引き起こされています.ラハールは通り道の全てのものを破壊しながら,数時間のうちに数十kmを流れ下ります.

映画の中で町を埋め尽くしたテフラ(火山灰や粗い火山岩塊)は,ガスの膨張によって吹き飛ばされたマグマや岩石の破片です.テフラは屋根に積もって家を押し潰したり,呼吸器にダメージを与えたり,機械に損害を与えます.テフラは噴火地点から数百km離れたところでも,機械に障害を与えたり,航空機にひどいダメージを与えたり,呼吸障害や送電線のショートなどを引き起こします.また爆発によって巨大な岩塊が数kmも吹き飛ばされることもあります.映画のように1992年にコロンビアのガレラス火山,1979年にイタリアのエトナ火山で落ちてくる岩塊による犠牲者が出ています.

主人公によって"pyroclastic clouds"と呼ばれた,火砕サージ,火砕流は高温のテフラの雲(火砕サージ)または密度が大きなテフラとガスの混合物(火砕流)です.火砕流・サージは通り道にあるものをほとんど焼き,あるいは破壊して,時速100km以上の速度で流れます.ほとんどの火砕サージの到達範囲は数kmほどですが,セントヘレンズ山の1980年の噴火では,火山から28kmも達し,57人の犠牲者を出しました.火砕サージ・火砕流は1982年にメキシコのエルチチョン火山で2000人,1991年に日本の雲仙火山で43人の犠牲者を出しています.映画とは違って火砕流や火砕サージから自動車で逃げることはできません.

北西太平洋岸やアラスカのような爆発的な成層火山では,溶岩流は厚く,ゆっくりと流れます.ハワイ島のキラウエア火山は映画で描かれたような薄い,流れやすい溶岩流を歴史時代の間,そして1983年からずっと続けて噴出しています.溶岩流は1989年にキラウエアのビジターセンターを破壊し,1991年にはキラウエアの南東山腹のカラパナの町を飲み込みました.

Q:噴火していないときでも火山は危険ですか?

A:確かに危険です.多くの成層火山は硬い石をやわらかい,粘土鉱物に変えてしまう高温の酸性熱水系を持っています.火山体は次第に脆くなっていき,かなりの部分が突然崩れ落ちることがあります.水による地滑りは,まったく火山性や地震などの前兆なしに起こることがあるので,特に危険です.

このようにして起きる泥流は,レーニエ山から流れ下る河川で特に危険が高いのです.なぜなら氾濫原に人口が多いこと,巨大な脆い山体,そして火山活動がないにもかかわらず規模が大きな泥流が発生している歴史があるからです.
(訳者注:日本では地震による山体崩壊の例として1984年に御岳山で起きています.)

Q:火山の近くの住民は将来の噴火にどう備えればいいのでしょう?

A:住民のみなさんは火山活動の危険がおよぶ地域に住んだり,働いたりすることを決めるために,USGS火山災害レポートのコピーを入手できます.近くの火山が騒がしい,あるいは噴火したということを含めた自然災害に,誰もが自分とその家族がどう対応するかの計画を立てておくべきです.地元の緊急事態対処の機関が薦める,家族が離れ離れになったときの集合場所,非常時の避難所はどこか,どんな非常用品を入手しておくべきか,数日間自給する方法を知っておくことなどが準備すべきことです.火山の周辺100マイル以内に住んでいる住民は,地域のために火山活動が始まる可能性にどう自治体がどう準備しているかを知っておかなければなりません. 最後に活火山の近くに住むことで得られる,すばらしい風景,休養,そして元気付けられる利益を楽しむことです.
(訳者注:地質調査所では日本国内のいくつかの活火山の噴火史を解説した火山地質図を出版しています.またいくつかの自治体では災害予測図を作成し公表しているところがあります.)


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