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第16回地質調査所研究講演会 微小領域分析が拓く地球科学 
−二次イオン質量分析法(SIMS)を中心にして−
日  時:
平成12年11月29日(水)
9:50開場(10:00開演)
場  所:
三会堂ビル9階 石垣記念ホ−ル
東京都港区赤坂1-9-13
TEL 03-3582-7451
主  催:
工業技術院地質調査所・(財)日本産業技術振興協会(JITA)

simsイメージ

 総合科学である地球科学は、様々な手法を用いて研究が進展しますが、機器の技術的な高度化に伴い、最先端の研究が生まれてきました。地球科学試料の元素分析や同位体分析においても、目的や対象に応じて多くの機器分析法が活用されています。
 近年、岩石の微小部分や1粒の鉱物が重要な情報を持っていることが明らかになってきており、元素分析法や同位体分析法を微小な試料に適用する技術が求められています。この微小領域分析の意義について考えると共に、それを地球科学に適用した研究について紹介しました。
 この講演会では、8件の講演と、4件のポスターセッションに、106名の参加者を集めました。
プログラム
9:50<開 場>
午前の部:(司会 産学官連携推進センタ−長 湯浅 真人)

10:00〜10:05
開会の挨拶

地質調査所 所長 小玉 喜三郎
10:05〜10:20
微小領域分析が拓く地球科学
地質調査所 資源エネルギー地質部 森下 祐一
地球科学分野の研究で重要性を増している微小領域分析の有力な手法の一つに、二次イオン質量分析法(SIMS)がある。地質調査所が導入したSIMSの概要を紹介し、合わせて本日の各講演内容を概観することにより、微小領域分析の意義について述べる。
10:20〜11:10
[特別講演]SIMSと私
(株)松下テクノリサーチ 代表取締役常務 吉岡 芳明
SIMSの装置開発やSIMS分析手法の研究・開発・応用に23年間係わった経験をもとに、SIMSの歴史とその将来性、及びSIMSを用いた分析・解析の位置付けの変遷について述べる。
11:10〜11:50
微小領域における硫黄・シリコン同位体比の精密測定
地質調査所 資源エネルギー地質部 森下 祐一
硫黄等軽元素の同位体比は、それを含む鉱物が生成する場の物理化学条件により大きく変化する。このため、従来から岩石・鉱物試料をガス化してその同位体比を気体質量分析計で測定し、鉱物生成環境の推定に関する研究を進めてきた。特にシリコンは、重要な半導体材料であると同時に標準物質としても用いられているが、同位体組成に関する研究は十分ではなかった。本講演ではSIMSを用いて硫黄・シリコン同位体比の微小領域測定を行なう上での検討事項を紹介し、SIMSを用いた同位体比測定の持つ意義について述べる。
11:50〜12:30
岩石中のジルコン1粒から解明する岩石の生い立ち
-SIMSを用いたジルコンのU-Pb年代測定とその意義-
地質調査所 資源エネルギー地質部 小笠原正継
花崗岩などの酸性の岩石に普遍的に含まれるジルコン結晶を対象として求めるU-Pb年代は、数千万年より古い岩石の年代測定法として用いられており、特に先カンブリア代の岩石については、最も信頼できる年代を与える。SIMSを用いると、25ミクロン以下の領域のU-Pb年代を求めることが可能となり、ジルコン1粒毎の年代を求めることができる。特に、複雑な過程を経て形成されたジルコンでは、結晶1粒中の更に微小部分の年代を求めることができ、岩石の形成過程を解明する重要な情報を提供する。本講演では地質調査所のSIMSを用いたU-Pb年代測定の例を紹介し、その意義について述べる。

12:30〜13:50<休憩:ポスターセッション>

午後の部:(司会 地質調査所 地殻化学部長 富樫 茂子)

13:50〜14:40
[特別講演]隕石希ガスの微細分布から見た太陽系初期状態

九州大学 大学院理学研究科教授 高岡 宣雄
始原的隕石は、原始太陽系星雲で作られた様々な鉱物の集合体で、太陽系物質がどのような条件の下で、どのような過程を経て形成されたかを記録している、いわば原始太陽系の化石である。この化石に記録されている原始太陽系形成の情報の中でも、最も安定に保持されている同位体組成を測定することによって、46億年前に何が起こったかを解読できる。特に、吸着や溶解などによって隕石中にトラップされた希ガスは、化学的に不活性であり、岩石鉱物形成時の星雲の条件や隕石母天体での変成過程を反映する。高感度・高分解能の希ガス同位体分析法を駆使した、希ガスによる太陽系の初期状態の研究について解説する。
14:40〜15:20
SIMSで探る原始太陽系
地質調査所 地殻化学部 木多 紀子
隕石は地球の原料物質であり、地球の年令は隕石の年代測定により与えられている。このため、隕石は地球の初期条件を与える鍵として重要である。原始太陽系星雲の化石に相当する隕石は、形成時刻、場所、物理化学環境の違う様々な物質がミクロンスケールで混在しているため、SIMSによる隕石の局所分析が重要な役割を果たしている。本講演では極めて未分化な隕石中のコンドルールのSIMS分析に基づき、短寿命放射性核種26Alを用いた太陽系初期数百万年の年代研究について述べる。
15:20〜15:50
微小領域分析で明らかにする有珠火山マグマ溜まりの進化過程
地質調査所 地殻熱部 東宮 昭彦
有珠火山は、1663年に新たな活動期に入って以来、数十年おきに噴火を繰り返す活火山であり、2000年にも噴火が起きたばかりである。各噴火における噴出物に含まれる結晶(斑晶鉱物)の微小領域化学分析を行なった結果、1663年以来のマグマ溜まりの進化や噴火過程が岩石学的に読めるようになってきたので、その報告をする。
15:50〜16:20
SIMSでみる火山噴火
地質調査所 環境地質部 宮城 磯治
有珠山や三宅島における火山噴火では、マグマ自体に溶解していたガスと過熱された地下水によって、岩塊や火山灰が空高く巻き上がった。本講演では、火山噴火においてマグマ中のガス成分(主にH2O、 CO2)が果たす重要な役割について述べ、SIMSを用いたガス成分分析によって何がわかるかを、最新の成果に基づいて紹介する。

16:20〜16:40
総合討論

16:40〜16:45
閉会の挨拶

地質調査所 次長 加藤 碵一


10:00〜16:20<ポスタ−セッション>

1.斜長石のSIMS測定によるマグマ組成の推定

地質調査所 地殻化学部 富樫 茂子
火山岩に含まれる斜長石の微量元素組成濃度から、マグマの組成を定量的に推定するために、元素の分配の規則性を精密なSIMS測定により求めた。温度が一定ならば、元素分配は斜長石の灰長石成分によって大きく変化し、変化の割合は元素のイオン半径に支配されている。この規則性を用いれば、地球のマグマだまり中の結晶化・脱ガス・マグマ混合過程のみならず、月などの地球外天体のマグマ組成変化についても、小さな斜長石片のSIMS測定によって推定が可能である。
2.サンゴの微小領域分析による環境変動解析の試み
地質調査所 地殻化学部 岡井 貴司、海洋地質部 鈴木  淳
サンゴやシャコ貝といった炭酸塩の骨格(殻)を持つ生物は、その成長に伴い炭酸塩の骨格を形成する際に、その周辺の様々な環境の変化を記録していることから、これらに含まれる化学成分を分析して過去の環境変動を解明する研究が行われている。SIMSを用いた炭酸塩の分析手法について検討するとともに、サンゴの微小領域分析から、より時間分解能の高い環境変動解析の可能性や環境指標としての正確さ・的確さの検証について考える。
3.マルチコレクターを用いた精密Mg同位体比測定とコンドルールの年代測定
地質調査所 地殻化学部 Liu Yongzhong
太陽系の初期に形成したコンドルールと呼ばれる球粒は太陽系初期の化学分別を探る重要な鍵である。コンドルール中に存在した短寿命放射性核種26Alに由来する26Mgの0.1%以下というごくわずかな過剰を検出してコンドルール形成のタイムスケールを調べるため、マルチコレクターファラデーカップを用いて0.01%の高精度のMg同位体測定法を開発した。コンドルールの年代測定結果を含め報告する。
4.斜長石斑晶の酸素同位体累帯構造
地質調査所 地殻化学部 佐藤 久夫
斜長石は玄武岩からデイサイト質マグマまで広く出現し、地殻物質の進化を教えてくれる重要な鉱物である。三宅島・八丈島・雲仙火山産の斜長石を、高精度微小酸素同位体分析が可能なレーザーマイクロプローブを用いて調べたところ、多くの斜長石斑晶において酸素同位体累帯構造が認められた。この現象は実験的に合成した斜長石においても認められ、メルトの組成変化だけでなく結晶成長条件にも支配された現象であることが明らかになった。