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浅海域と湖沼域の活断層調査 −これまでの研究と今後の課題−
荒井晃作 (海洋地質部)
2000
第51巻 第2/3号,49-58頁
5図
Keywords: active fault, shallow marine, bay, lake, seismic survey
[ 要 旨 ]
陸棚や内湾などの浅い海域における活断層調査の現状と課題を今までの研究をレビューし,地質条件の違いの観点からまとめた.断層の活動履歴を明らかにするには,少なくとも100年程度の時間分解能と,数十cmの変位量を読み取れる垂直分解能の調査が必要である.音波探査は断層およびその周辺の地層の形態を明らかにするために有効な手段であり,数kHzの音源を用いて調査を行なえば,数十cmの垂直分解能が得られる.
堆積速度と堆積物の粒度は,活断層調査において非常に重要である.堆積速度が大きい海域では,分解能が高くなるだけでなく,その速度が断層の変位速度を上回れば,基準面が形成される.その年代を得ることによって,イベントの時期が求められる.堆積物の粒度は音波探査のプロファイルに影響を与え,泥質な海域の方が地層の形態や変形が観察しやすい.同時に,基準面の年代を得るためのコア試料の採取も泥質な海域の方が容易である.このような観点から考えると,閉鎖的な内湾や湖沼環境が調査に適しており,大陸棚のような海域での調査が今後の課題である.
音波探査プロファイルに基づいた海底活断層の認定 −fault related fold, growth strata及びgrowth triangleの適用−
岡村行信 (海洋地質部)
2000
第51巻 第2/3号,59-77頁
18図
Keywords: ault related fold, growth strata, growth triangle, offshore active fault, seismic profile
[ 要 旨 ]
音波探査プロファイルでは,断層そのものより断層運動に伴って形成される撓曲を含む褶曲構造が明瞭に観察できる.このような断層運動に伴う褶曲構造から断層の形態を推定し,活構造の解析を行うため,fault-related fold及びそれから発展したgrowth strata及びgrowth triangleに関する今までの研究をレビューした.褶曲の成長様式は,傾斜が一定のまま幅が増加することによって成長するヒンジ移動型と,幅が一定で傾斜が増すことによって成長するヒンジ固定型に区分できる.前者は,堆積層の中にデタッチメントが形成される低角逆断層帯で広く発達し,断層と褶曲の関係からfault-bend fold, fault-propagation fold及びdetachment foldに区分される.これらの褶曲構造の成長過程はgrowth triangleと呼ばれる特徴的な傾斜帯として保存されていて,活構造の成長史を記録している.一方,基盤を含む断層とそれに伴う褶曲構造はヒンジ固定型の成長様式を持つと考えられている.Trishearモデルはそのような変型様式を説明する一つのモデルで,変形が始まる前に堆積した地層でも下位の地層ほど傾斜が大きくなり,地層の厚さも変化する.しかしながら,ヒンジ固定型の褶曲でも条件によってgrowth triangleと類似の構造が形成される.日本周辺海域でもgrowth triangleが認められ,断層の活動史が保存されている.カリフォルニア州南部のTransverse Rangesでは,バランス断面法を適用した地殻深部まで含む断面が作成され,地殻の短縮量や短縮速度が地質学的なデータに基づいて求められている.日本でも,地殻深部の反射断面やボーリングデータを充実することによって,信頼できる地殻の短縮量や短縮速度を求めることが期待される.
タービディティー・カーレントの発生機構 −タービダイトを用いた海域地震発生間隔評価手法の確立に向けて−
中嶋 健(海洋地質部)
2000
第51巻 第2/3号,79-87頁
1図,1表
Keywords: turbidity current, initiation, trigger, turbidite, earthquake, recurrence interval
[ 要 旨 ]
タービダイトを用いて海域地震の発生間隔を評価する手法の有効性を検証するために,特にタービディティー・カーレントの発生機構についてレビューを行った.タービディティー・カーレントは,懸濁水の流入によるか,海底斜面の崩壊により発生する.懸濁水の流入による発生機構には,高濁度河川水の直接流入,高波・潮汐による下降流から発生するイグニティブフロー,大陸棚の懸濁層から発生する下降流,および火山砕屑物の流入による高密度流の発生がある.タービディティー・カーレント発生のトリガーとなりうるのは,地震のほかに洪水,暴風,潮汐,津波,火山噴火,急斜面の形成,過堆積,ガスの発生,海水準の低下等がある.これらのトリガーによるタービディティー・カーレントの多くは大陸棚上で発生する.一方,陸棚斜面以深では,地震により発生する海底斜面の崩壊が最も可能性の高いタービディティー・カーレントの発生機構である.以上のことから,狭い大陸棚で陸と隔てられた沿岸海盆では大陸棚起源のタービディティー・カーレントの流入が考えられるので,タービダイトの頻度を用いて信頼性の高い地震発生間隔の評価を行うことは現状では困難である.一方,海嶺などの地質構造により,大陸棚から隔離された深海盆ではこの手法を用いてより信頼性の高い海域地震発生間隔の評価が可能である.タービディティー・カーレントの発生機構はまだ十分解明されているとは言えないため,発生機構の解明と各機構の結果堆積した堆積物についての研究が今後さらに必要である.
地震性堆積物を用いた地震発生年代と発生間隔の解析
池原 研 (海洋地質部)
2000
第51巻 第1号,89-102頁
4図,1表
Keywords: paleoseismicity, radiocarbon dating, recurrence interval, earthquake-induced sediment
[ 要 旨 ]
大地震の記録は地震による諸現象によるイベント堆積物や急激な堆積環境の変化として地層中に記録されることがある.地震時の臨海低地の急激な沈降は海水の浸入を許し,土壌の上に潮間帯の泥層を堆積させる.地震による強い揺れは,空中・水中の斜面崩壊の原因となり,斜面基部に崩壊起源の堆積層を形成する.水中では,タービダイトや水中土石流堆積物が形成される.また強い揺れにより堆積物の液状化・流動化が起こり,堆積層の変形や砂脈の形成などが行われる.津波は地震時の大きな現象の一つであるが,これにより通常では形成されないような粗粒堆積物の堆積層が形成されることがある.したがって,これらのイベント堆積物の年代から巨大地震の発生年代や発生間隔を推定することが可能である.しかし,海洋堆積物を試料として用いる場合,放射性炭素年代から暦年代への読み替え方法にまだ問題があるため,歴史史料や考古遺跡の記録と高い精度で対比させて議論することは難しい場合がある.
沈み込む海山と上盤プレートとの相互作用 −大地震の発生との関連について
山崎俊嗣 (海洋地質部)
2000
第51巻 第1号,103-111頁
5図
Keywords: Seamount subduction, asperity, earthquake, trench
[ 要 旨 ]
沈み込むプレート上の海山等の高まりと上盤プレートとの間の相互作用,及び,それの地震活動との関連に関する最近の研究をレビューした.海山の沈み込みにより,陸側斜面には特徴的な構造ができる.沈み込む海山の前面には地形的高まりとバックスラストが形成される.海山の背後には,まず急崖を伴う凹地が残され,海山の沈み込みが進むにつれ,陸側に傾斜する正断層群が形成されるようになる.最近,沈み込むプレート上の高まりが,地震のasperityになる可能性が注目されている.チリ型沈み込み帯におけるスラスト型巨大地震が,海底下深く沈み込んだ海山が上盤プレート底にぶつかって剪断されることにより起きるとするモデルや,海台・海山列の沈み込みがサイスミック・カップリングを増加させているとするモデルが出されている.一方,陸側斜面の精密地形データと地震活動データがそろっている中米海溝コスタリカ沖では,海山のような起伏の存在が比較的小規模なasperityを作り,海山の存在しない平坦な領域が面的なカップリングを持つのに比べて,全体としてのカップリングの強度を減少させていると推定されている.東北日本沈み込み帯においても,沈み込む太平洋プレートの起伏と大地震の発生との関連について,同様の考えが出されている.日本周辺では,海溝から大陸棚にかけての陸側斜面の系統的な精密海底地形マッピングが進行しており,より精密な議論が可能になりつつある.
