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  特集 平成7年度兵庫県南部地震による平野の地盤災害・山麓斜面災害の緊急調査報告

地震直後の緊急調査の経緯と調査結果の概要

平成7年兵庫県南部地震による神戸市・芦屋市・西宮市における家屋の被害分布

兵庫県芦屋市における芦屋川測線の反射法弾性波探査

兵庫県神戸市における脇浜第2測線の反射法弾性波探査

神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査 (1) −重力異常と伏在断層−

神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査 (2) −基盤構造−

平成7年兵庫県南部地震による被害集中地帯とその周辺における短い測点間隔の繰り返し水準測量

平成7年兵庫県南部地震による都市地域の斜面変動

地震直後の緊急調査の経緯と調査結果の概要

磯部一洋(環境地質部)

1996

第47巻 第2/3号,65-66頁

[ まえがき ]
 1995年1月17日午前5時46分に,淡路島北方の明石海峡下14.3q付近を震源として,平成7年兵庫県南部地震(M7.2)が発生した.この直下型地震による犠牲者は6千名以上に達し,建築物等に甚大な被害が発生し,戦後最悪の被害規模になった.本震災は,大阪湾北岸の平野及び六甲山地の山麓斜面で多発し,被害域が神戸市から西宮市へかけて帯状に伸び,山麓斜面には亀裂が多数見つかった.このため,地質調査所では平野地盤・斜面災害に詳しい環境地質課の研究者らによる緊急調査を計画・実施した.

 本特集号は,平成6年度補正予算によって実施した「兵庫県南部の沖積地盤・山麓斜面に関する斜面災害等調査」の調査結果を主要な内容とし,平成6年度経常研究費による緊急調査結果及び平成7年度補正予算による調査結果の一部を取りまとめたものである.

平成7年兵庫県南部地震による神戸市・芦屋市・西宮市における家屋の被害分布

遠藤秀典(環境地質部)・村田泰章(地質情報センター)・卜部厚志(環境地質部・現 香川大学)

1996

第47巻 第 2/3号,67-78頁

8図

Keywords: geologic hazard, earthquake hazard, 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake, Kobe, Ashiya, Nishinomiya, Hyogo

[ 要 旨 ]
 平成7年兵庫県南部地震は,六甲山地と大阪湾の間の平地に著しい被害をもたらした.この被害分布について,神戸市から西宮市に至る地域を対象に検討した.まず地震発生直後に撮影された空中写真を判読し,被害分布の概要を把握した.また,現地において被害の分布及び被害状況を調査した.さらに震災復興都市づくり特別委員会(1995)の戸別の被害分布資料をもとに,主に木造家屋からなる低層建物の被害率の分布図を作成し検討した.これらの結果,今回の地震による家屋の被害分布には次のような特徴が認められる. 1) 被害率が高い範囲が全体として帯状に分布する.この帯状の地帯は神戸駅付近で途切れている.また帯状に分布する方向は,この両側でやや異なっていると共に,石屋川付近でさらに東西方向に折れ曲がっている. 2) この帯状の地帯は低層建物の被害率が急に高くなる境界に挟まれている. 3) 被害率が急に高くなる境界が直線状あるいは線上の位置に並んでいるように認められる.この特徴は,被害集中地帯の北側の境界で特に明瞭であり,それぞれの地域において被害集中地帯が延びる方向に平行に認められる.また,被害率が急変する直線状の部分が,被害集中地帯の延びと斜交する方向にも認められる.

兵庫県芦屋市における芦屋川測線の反射法弾性波探査

遠藤秀典(環境地質部)・渡辺史郎(地殻物理部)・牧野雅彦(地殻物理部)・卜部厚志(環境地質部,現 香川大学)・阿蘇弘生(株・ダイヤコンサルタント)・是石康則(〃)・江尻寿延(〃)

1996

第47巻 第2/3号,79-94頁

3図,2表,2図版

Keywords: seismic survey, reflection survey, fault, earthquake, 1995 Hyougoken-Nanbu Earthquake, Ashiya, Hyogo

[ 要 旨 ]
 平成7年兵庫県南部地震は,神戸市から西宮市付近にかけて,平地の中の帯状の地帯に著しい被害をもたらした.この被害に関する地下地質について検討するため,芦屋市において芦屋川測線の反射法弾性波探査を実施した.この探査は,地下数100m以浅を主な対象に,地下地質構造について詳しく検討できるように行った.
 この結果,次のことが明らかになった. 1) 阪神本線付近の地下に浅部まで変位が及んでいる断層が伏在して分布する. 2) その南側の深部にも断層が分布する. 3) これらの断層に挟まれた範囲で地層 の傾斜が大きく,両側ではより水平に分布する. 4) 変位のセンスはいずれも北傾斜の逆断層であり,横擦れの変位を伴っている可能性がある. 5) これらのうち,阪神本線付近の断層には,変位の累積性が認められる. 6) この断層付近には,反射面が尖滅(pinch out)する層準が認められ,これらが過去に大きな断層運動を生じた年代に対応している可能性がある. 7) 断層の分布位置と家屋被害の分布とを比較すると,阪神本線付近の断層は被害集中地帯の南側の境界に位置していると共に,その南西側では高架が倒壊する著しい被害が生じており,断層の分布と被害の分布が密接に関係していることを示唆する.

兵庫県神戸市における脇浜第2測線の反射法弾性波探査

遠藤秀典(環境地質部)・渡辺史郎(地殻物理部)・牧野雅彦(〃)・横田 裕(株・阪神コンサルタンツ)・野田利一(〃)・香川敏幸(〃)

1996

第47巻 第2/3号,95-108頁

9図,2表,2図版

Keywords: seismic survey, reflection survey, fault, earthquake, 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake, Wakinohama, Kobe, Hyogo

[ 要 旨 ]
 平成7年兵庫県南部地震は,神戸市から西宮市付近にかけて,平地の中の帯状の地帯に著しい被害をもたらした.この被害に関する地下地質について検討するため,神戸市中央区と灘区の境界付近において脇浜第2測線の反射法弾性波探査を実施した.この探査は,地下数100m以浅を主な対象に,地下地質構造について詳しく検討できるように行った.特にこの測線では,発振点から受振点までの距離,オフセット距離5mからと共に125mからの記録も収録し,36重合の垂直重合数が多い探査で行った.
この結果,次のことが明らかになった. 1) JR線付近及び王子公園南西端付近の地下に,変位が浅部まで及んでいる断層が伏在して分布する. 2) これらの断層に挟まれた範囲で地層 は大きく南側に傾き,両側ではより水平である. 3) これらの断層のうち海側のものは北傾斜の逆断層の変位を示す. 4) 王子公園南西端付近では,破砕帯が幅広く分布すると共に,横擦れの変位を伴っている可能性がある. 5) JR線付近の断層には,断層の活動に累積性が認められる. 6) この断層付近には,反射面が尖滅(pinch out)する層準が認められ,これらが過去に大きな断層運動を生じた年代に対応している可能性がある. 7) 2箇所の断層帯の両側の反射記録を比較すると,反射面の分布パターンには共通性が認められ,王子公園南西端付近の断層の大きな変位が比較的新しい地質年代に生じた可能性があることを示唆する. 8) 家屋被害の分布と比較すると,王子公園南西端付近は,被害が急に少なくなる被害集中地帯の北側の境界付近に位置する.また,JR 線付近の断層の地表への交点付近は,鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物が多く,それらの大部分が大破する大きな被害を被っており,断層の分布と被害の分布が密接に関係していることを示唆する.

神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査 (1) −重力異常と伏在断層−

村田泰章(地質情報センター)・牧野雅彦(地殻物理部)・遠藤秀典(環境地質部)・渡辺和明(地質情報センター)・渡辺史郎(地殻物理部)・卜部厚志(環境地質部・現香川大学)

1996

第47巻 第2/3号,109-132頁

10図,1表,2図版

Keywords: 1995 Hyogaken-Nanbu Earthquake, Kobe city, Ashiya city, Nshinomiya city, microgravity survey, Bouguer anomaly, concealed fault

[ 要 旨 ]
 平成7年兵庫県南部地震で大きな災害を被った神戸市,芦屋市,西宮市において,被害域の地質構造,特に伏在断層の分布と基盤構造を明らかにすることを目的として,精密重力探査を実施した.重力の測点数は,計1,824点に上り,水準測量,GPS測量,地形図からの読み取りによって,測点の標高と位置を求めた.伏在断層に伴う微弱な重力異常の変化を捉えるために,重力測定値に国土地理院の50mメッシュの地形モデルを使用した詳細な地形補正を実施して,ブーゲー異常図を作成した.また,ブーゲー異常図のみでは,断層の位置を推定することは難しいので,ブーゲー異常の水平勾配図を作成した.これらから次のことが分かった. (1) ブーゲー異常図と水平勾配図では,既知の断層の位置とほぼ一致するように,ブーゲー異常の急変帯が分布している. (2) 甲陽断層の延長など,平地側に断層が分布していることが推定できた. (3) 平地においても,ブーゲー異常の勾配は大きく,基盤の落差が分布すると考えられる.

神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査 (2) −基盤構造−

村田泰章(地質情報センター)・牧野雅彦(地殻物理部)・遠藤秀典(環境地質部)・渡辺和明(地質情報センター)・渡辺史郎(地殻物理部)・卜部厚志(環境地質部・現香川大学)

1996

第47巻 第2/3号,133-164頁

6図,1表

Keywords: 1995 Hyougoken-Nanbu Earthquake, microgravity, gravity survey, Bouguer anomaly, basement structure, two-dimensional analysis, fault, Rokko mountains, Osaka bay

[ 要 旨 ]
 1995年兵庫県南部地震によって,甚大な被害集中地帯となった神戸市・芦屋市・西宮市における地下地質構造の調査のために,精密重力探査を実施した.その探査結果から,被害地帯に沿ってブーゲー異常の急激な傾斜が存在することがわかった(村田ほか,1996).これは地下における重力基盤の急傾斜の存在を意味する.そこで,本報告では,この急傾斜帯を横切る測線の重力データの解析を行い.基盤構造と伏在断層の深度断面について述べる.
本解析地域の重力基盤は,六甲山地で海面上約1kmまで隆起し,大阪湾内では海面下1km以上まで沈降しているため,フーリエ級数法やフーリエ積分法などのような,従来の解析法をそのまま適用することはできない.したがって,急峻な基盤構造を解析できる新しい方法を採用した.

得られた解析結果から,基盤と堆積層の境界は大阪湾の下で1.5kmの深度に存在し,被害地帯の北側の境界で基盤は急激に大阪湾に向かって落ち込んでいることがわかった.このことが,本地域において被害が集中した一つの要因と思われる.

平成7年兵庫県南部地震による被害集中地帯とその周辺における短い測点間隔の繰り返し水準測量

渡辺和明(地質情報センター)・遠藤秀典(環境地質部)・渡辺史郎(地殻物理部)・牧野雅彦(〃)・村田泰章(地質情報センター)・卜部厚志(環境地質部・現 香川大学)

1996

第47巻 第 2/3号,165-173頁

7図,2表

Keywords: 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake, first order leveling, repetitious leveling, vertical movement, measurement

[ 要 旨 ]
 平成7年兵庫県南部地震による被害集中地帯の地震後の地盤の変動について検討するため,兵庫県神戸市須磨区から西宮市に至る地域で水準の繰り返し観測を行った.測量路線は被害集中地帯を横断する南北方向に設定し,精密な変動傾向をつかむために測点間隔は約25m とした.また,各路線は東西方向の路線により水準点に結合している.これらの測点の大部分は1995年3月に設置し,1級水準測量を行い,それらの一部について7月に繰り返し水準測量を行った.この結果,多くの場所で上下変化が認められた.これらの変化の中には,変化が連続しない局所的な変化,数地点で連続する変化及びより広範囲に渡る変化が認められた.約25m の短い測点間隔で路線長が数km以上に達する繰り返し水準測量はこれまで例が極めて少ない.今回得られた結果は,局所的な変化の検出と共に,より広域的な変動の空間的な分布の特徴・傾向について検討する上でも極めて有効な方法であることを示している.

平成7年兵庫県南部地震による都市域の斜面変動

釜井俊孝(環境地質部・現日本大学)・鈴木清文(九州大学)・磯部一洋(環境地質部)

1996

第47巻 第 2/3号,175-200頁

23図

Keywords: 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake, land slide, urban development

[ 要 旨 ]
 宝塚市から神戸市にかけての都市地域では,平成7年兵庫県南部地震により丘陵斜面上で多数の斜面変動が発生した.約200箇所の斜面変動は以下の4種類に区分される.

A.高速な流れを伴った地すべり
B.宅造地の人工谷埋め・盛り土の地すべり
C.沖積層の液状化による緩斜面堆積物の地すべり
D.急斜面の崩壊

 これらの斜面変動が発生した丘陵斜面は,主として大阪層群の砂,礫,固結粘土から構成され,都市化による地形改変が集約的に行われた地域である.すなわち,今回の地震による都市域の斜面変動は,開発によって人工的に素因が準備され,地震が誘因となって発生した点が特徴的である.同様な地盤条件は阪神地域に限らず広くわが国全体に見られ,今回と同様な災害が繰り返される可能性はきわめて高い.今後は,地盤条件を考慮した都市計画の整備と地盤に関する情報の公開を積極的に行うことが,防災上重要であると考えられる.