研究実施体制
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研究実施体制はどうあるべきか
1.基本的認識
(1) 地質調査所が実施すべき研究には,国の行政ニーズに基づいて行う
組織的研究(プロジェクト研究)と地球科学の進歩に貢献する自主的独創的
研究(基礎研究)があるほか,国土及び周辺海域の地球科学情報の系統的な
収集・加工・提供に関する研究も当所の重要な責務である.これらの研究は
互いに独立ではなく,相互が関連・共鳴し合って初めて国立の研究所としての
地質調査所の役割をはたすことができる.
(2) プロジェクト研究は,長期間にわたって計画的に実施する必要があるもの
(たとえば地質図幅の作成)と大規模な予算はつくが数年程度で終了するもの
に分けられる.後者の型のプロジェクト研究については,行政ニーズを先取り
し,所として戦略的にプロジェクトの提案を行い予算を確保する必要がある
という観点から,重点研究分野とその具体的課題を選定した.
(3) 基礎研究は,地質調査所全体の研究レベルの維持向上に必要であると同時
に,国立研究所の研究高度化・COE化の要請の中で今後特に強化する必要が
ある.所として重点的に育成すべき基礎研究テーマとして3テーマを選定した.
2.現状とその問題点
(1) 現在の研究組織は,その歴史的経緯を含めて分類すれば,2つの専門領域
研究部(地殻物理部・地殻化学部)と6つのプロジェクト研究部(地質部・
海洋地質部・環境地質部・地殻熱部・鉱物資源部・燃料資源部),および
国際研究交流と研究成果の普及をそれぞれ目的とする国際研究協力室,地質
情報センター・地質標本館からなっている.このほか,札幌と大阪にそれぞれ
支所と地域地質センターがある.
(2) プロジェクト研究部の幾つかは,社会的・経済的情勢の変化により行政
ニーズが減少あるいは消滅したために,本来の目的にかなうプロジェクト研究
を推進するための予算措置がなく,基礎研究中心になっていたり,あるいは
組織維持のために多様かつ細分化したテーマを抱え込むなど,本来のプロジェクト
部として形骸化している.
(3) 現在の研究部の構成では,多様化・学祭化する研究プロジェクトへの組織的
対応が難しい.現在各研究テーマの実施段階で,各部から専門家を集めて研究
グループを組織しているが,小規模なグループが乱立する結果となり,所として
長期的視野での研究企画・運営ができない.
(4) 昨年来,幾つかの重点研究分野で,関連グループをまとめた形で特別研究室
及びプロジェクトチームの精度を導入し,戦略的に研究計画の企画・運営を
行える体制をつくったが,各研究部との関係が整理されていない.
(5) 基礎研究の実施は,各研究者の自主的提案に基づいて行われているが,
所として明確な方針をもって奨励・指導・推進する体制がない.その結果,
基礎研究の内容・成果ともに発散的かつ小粒化しており,有能な研究指導者が
育成されていない.
(6) プロジェクト研究に忙殺されている研究者は,科学的に意義のある研究を
掘り下げる余裕がなく,所全体の研究ポテンシャルの低下につながる
おそれがある.
3.問題解決の方策
(1) 現行の部・課の編成を再検討し,プロジェクト研究と基礎研究が,効率よく
かつ相互に有機的に関連し合って実施できる体制に再編成する.
(2) プロジェクト研究については,当該分野の研究の企画立案・提案を長期的な
視野をもって行うと同時に,予算のスキーム及びその規模に応じて機動的かつ
柔軟にプロジェクトを実施できる体制をとる.
(3) 基礎研究については,各研究者に独創的かつチャレンジングな研究を実施
できる機会を制度的に保障すると共に,有能な研究指導者を育成・確保する.
(4) 所全体の研究レベルの向上と活性化のために,研究の性格に応じた適切な
研究評価を行うと共に,各部間及び所外との人事交流を活性化するなど,所の
運営のあり方を見直す.
4.新しい研究体制の提案
(1) 研究実施体制としては以下のようにいくつかの選択肢が考えられる.
- 選択肢-A
- 研究者は専門研究分野にもとづく領域部に在籍.プロジェクトは領域部から
必要な専門家を集めてグループで実施.専門領域部とプロジェクトを推進する
ぷループ制によるマトリクス方式.
- 利点:
- 急激に変化するニーズに機動的に対応できる.学祭的な課題に対応できる.
先例のない新たな課題をボトムアップ的にやるにはふさわしい.
- 欠点:
- 予算の切れ目がグループの切れ目.長期的な視野で技術・科学の体系を
戦略的,系統的に蓄積できない.組織的・基盤的な業務には不向き.外部に
向っての責任体制が不明確.
- 選択肢-B
- プロジェクト毎に必要な様々な研究領域の担当者を集めてプロジェクト部を
構成する事業本部的な実施体制.
- 利点:
- 目標が明確に限定され,ある程度長期的に継続するプロジェクトや定常的
業務を強力に推進することが出来る.また,外部に対して組織的に対応できる.
- 欠点:
- 実際には専門家が小規模に分断されやすく,少数定員型には不向き.専門家
の囲い込と固定化が生じ,流動的に変化しつつあるニーズの場合にはタイムリー
に対応することが難しい.前例のない新たな分野のプロジェクトには不向き.
創造的な研究の発展を阻害する.
- 選択肢-C
- プロジェクト部を主体に,小規模の専門家集団(地球物理・地球化学)は
領域部(現在の体制)
- 利点:
- Bと同じ.プロジェクトに対する小規模専門家集団の支援が受けやすい.
- 欠点:
- 新分野や行政ニーズの変化に的確に対応できず,時間とともに部の性格・
研究目標,研究者の意識が曖昧になる.運営による体制(グループ制,「推進
チーム」等)を組み合せるとするとさらに混然とする.A,Bの欠点も合わせ持つ.
- 選択肢-D
- 領域部を主体にプロジェクト部は必要最小限とし,両者の役割を明確に
区分
- 利点:
- プロジェクトの性格によりAとBの長所を生かし,かつ領域部において専門
分野の研究の深化が行える.部の性格,研究者の意識を明確にできる.
- 欠点:
- 研究者の流動がないと不公平感を生む.他のプロジェクト実施体制(グループ
制,「推進チーム」等)を組み合せないと実現不可能.
(2) 地質調査所の新しい研究体制として,以下の運営方針の下に選択肢Dを
提案する.
- ある程度長期間にわたって予算が保障され,計画的に実施する必要がある
プロジェクトについては部を組織する.
- 重要研究課題のうち,戦略的にプロジェクトの計画立案・提案を行い,各部を
横断する関連研究グループを統括して実施する必要のあるものについては,特別
研究室・プロジェクトチーム等を組織する.
- プロジェクト部以外の部については,基礎研究の高度化を目標とする研究
分野別の領域部に再編成し,プロジェクト研究には特別研究室・プロジェクト
チーム・研究グループを通じて参加する.
- プロジェクト部のメンバーは,領域部に移籍して独創的かつチャレンジングな
基礎研究を行える機会を制度的に保障する.
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[TM 1996-01-11]