International Activity
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地質調査所の国際活動
1. 地球科学研究のグローバルな性格
地球科学には,本来,研究・観察の対象となるフィールドが不可欠であるという
点で,固有の現地主義的な性格があり,そのため,その研究スタイルは他の
自然科学分野と比べてグローバルな性格が強い.
これは,研究対象となる地質現象には「国境」はなく,その真の科学的解明の
ためには必然的にグローバルな発想点行動を取らざるを得ない,という事情が
主な原因といえよう.
しかし,残念ながら,人間の社会的行為である研究活動には,常に「国境」が
ついてまわる.この意味で,地球科学の研究活動には,それを受け入れる国際的な,
出来れば多国間的な,国際協力の体制・枠組みが必須となるのである.
このような地球科学研究に特徴的な事情を反映して,地質調査所の国際活動は,
先進国,発展途上国を問わず,従来から広範囲にわたり,かつ,多国間的な観点をも
踏まえて,きわめて活発であった.発展途上国との技術協力・研究協力について
いえば,ほかの多くの理工学系研究所とは異なり,研究者の「ホンネ」にかかわる
対象として活発に取り組まれてきており,早くから技術移転分野での国際貢献をも
積極的に行ってきた点が特徴的である.
2. 国際協力の経緯
上記のような背景をもとに,地質調査所では他所に先駆けて,1967年には,
部相当組織である海外地質調査協力室を設立した.当時の主要な海外業務実績は,
通常の研究支援業務のほかに,
- ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会),CCOP(アジア沿海鉱物資源
探査調整委員会),SOPAC(南太平洋応用地球科学委員会)などを通じての
アジア・太平洋諸国との多国間協力の推進,
- サウジアラビア,トルコほかの発展途上国との継続的な二国間技術協力,
- ITIT(国際産業技術研究協力)事業への積極的な取り組み,
- JICA集団研修コース(沿海鉱物探査,地下水の2コース)の創設と長期間に
わたる運営,
などであった.
海外地質調査協力室は1988年に国際協力室と改名されたが,1993年には,
従来の全所的な国際企画・調整部門のみならず,国際協力なしでは行い得ない
テーマ(リモートセンシング,アジア広域地球科学図編纂,など)を重点的に
研究する2つの研究課をも備えることとなり,現在にいたっている.
3. 国際協力の現状
最近の研究現場での国際化の傾向は著しく,研究者レベルでの留学,
国際共同研究への参加,国際学会(5条適用を含む)などの増加が顕著である.
それに伴い,海外渡航・海外出張件数も急増の一途をたどっている.同時に,
外国人研究フェローの招聘件数も増加している.
これら研究協力への支援業務とは別に,国立研究機関としての地質調査所は,
個々の研究者レベルの国際協力活動を保障するために,以下のような国際協力の
枠組み作りを,以前にも増して積極的に進めてゆく必要に迫られている.
- 二国間協力
- MOU締結:アメリカ地質調査所(1995〜),ニュージーランド地質原子科学
研究所(1990〜),カナダ地質調査所(1993〜)
- 以上のほかに,先方からの申入れ多し(イギリス,スペイン,ヴェトナム,
韓国など)
- 多国間協力
- CCOP(東・東南アジア沿海・沿岸地球科学計画調整委員会;1994年に
名称変更) 1966年の創設以来密接な協力を継続中
- ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)
- SOPAC(南太平洋応用地球科学委員会)
- ICOGS(世界地質調査所コンソーシアム)
- CPCEMR(環太平洋エネルギー鉱物資源会議) 東アジア活構造図編纂
プロジェクトを実施中
一方,今年度の国際研究協力プロジェクトは以下のとおりである.
- 国際産業技術研究協力(ITIT)(4件)
- 「大陸乾燥−半乾燥地域の水文環境特性の解明」(中国)(1993-1996)
- 「海洋プレート断片の鉱物資源探査技術」(イギリス,インドネシア)(1992-1995)
- 「アジア地域における火山災害予測技術」(フィリピン,ほか)(1994-1997)
- 「アジア地域におけるマスムーブメントによる災害予測技術」
(インドネシア,ほか)(1994-1997)
- 国際特定共同研究(1件)
- 「マイクロ波合成開口レーダーのデータ解析技術」(カナダ)(1994-1996)
- 個別重要国際共同研究(5件)
- 「新規貫入岩体に伴う地熱資源」(ロシア)(1995)
- 「環日本海地域の花崗岩活動の時空分布」(ロシア)(1995)
- 「衛星リモートセンシング技術による未詳遠隔地域の地質探査手法」
(カナダ)(1995)
- 「ホワイト島の火山調査」(ニュージーランド)(1995)
- 「タウポ火山帯における地熱系モニタリング」(ニュージーランド)(1995)
- 工技院特研(1件)
- 「アジア地圏環境の探査と評価の手法に関する研究」(1993-1997)
東アジア自然災害図プロジェクトを含む
JICAベースでの技術協力については,目下以下の2件のプロジェクトタイプ
技術協力(「プロ技協」)を,日本政府内の技術幹事機関として実施している.
- 「パキスタン地質科学研究所」(1990-1997予定)
- 「モンゴル地質鉱物資源研究所」(1994-1999予定)
JICA協力については,その他に,個別専門家派遣(長期3名,短期22名),
研修生受け入れ(19名)(いずれも平成6年度実績)などが行われている.
さらに,通商産業行政へのアドバイザー的国際活動も活発で,その分野は,
宇宙開発,リモートセンシング,海洋資源,ガスハイドレート、石炭,地熱など,
多岐にわたっている.
4. 今後の展望
このたび,地質調査所は所の最重点研究課題の一つとして「東アジアの持続的
発展に資する地球科学的評価の研究」(自然災害,鉱物資源,GIS情報処理などが
重点テーマ)を採択し,今後の中−長期的展望の中で,とくにアジア諸国との
研究協力の推進が最も重要であることを確認した.
このような動きに示されるように,研究者レベルでの活動では国際化の志向が
今後一層強まってゆくことは明かである.また,研究テーマ自体とその協力体制に
ついても,自然災害関連,地球環境関連,超深度掘削など,一層のグローバル化,
広域(マルチ)化が進むであろう.
国立研究機関としての地質調査所は,以上のような状況を受けて,個別の
研究協力をホストするための枠組み作りとして,MOU締結,各種国際機関との
協力の強化,など,二国間,多国間を問わず,種々の国際協力ネットワークの
構築とその活用を目指してゆかなければならないであろう.
それは,地球科学研究において真の科学的解決を図るためには,広域的
(Regional)ないしは汎地球的(Global)な視点が必須であること,そして,
そのための研究基盤として,国際研究協力を可能とする枠組みがあらかじめ
用意されていることが大前提となるからである.この意味で,地質調査所に
とっての国際協力活動の重要性は今後もますます大きくなってゆくことが
明かである.
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[TM 1995-09-23]