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平成11年度創立記念式典挨拶

―科学技術と社会―

平成 11年 7月 1日

電子技術総合研究所長

梶 村 皓 二 

 電子技術総合研究所は創立108周年を迎えました。1891年の創立以来、時代の変化にしっかり対応し、時には時代を先取りして、わが国の科学技術の発展に寄与してきたことの重さは、今までの歴史以上に、これからの私たちにとって大きな資産となり、社会的責任を持つことをしっかり心に留めておくことが大切です。

 電総研創立の時期は、科学的研究が役に立つことが認められ、社会組織の中に地位を得て研究開発が促進される時代の始まりでした。科学技術と社会の関係は、歴史の中で少なくとも3つの段階に分けて考えられています。

 第1の段階は16世紀半ばから18世紀終り頃までで、科学アカデミーが科学者の間の協力や情報共有の中心であった高尚なホビーの時代です。当時、ロンドンの王立協会は会員のもちよった会費で運営されていました。王立協会の中心にいたニュートンは、たまたまケンブリッジ大学にいましたが、これはいわば偶然で、当時の大学が科学研究を助けたわけではなかったそうです。

 第2の段階は19世紀から第2次大戦までで、大学や科学技術系学校が研究の中心になった時代です。電総研は、この時期に社会との接点を明瞭にするために、大学と違って設立されました。次に来る段階を考えれば、時代を先取りしたものでした。

 第3の段階は第2次世界大戦以後で、コンピューターの開発が代表例に挙げられるように、科学技術の研究開発が国の命運を決める重要な問題であることが、非常に多くの人に認識され、政府、企業、財団などから大量の資金が投入されるようになった時代です。科学技術が社会の主流に出てきたわけです。この変化は、科学と社会との関係の新しい時代を画するものであることを強調して、「科学技術の制度化」と呼ぶ人がいます。2つ目、3つ目の段階は前の段階が否定されたわけではなく上に積み重ねられていったと言うべきだと思います。

 さて、社会のメイン・ストリートに出てきたことによって、認知され、サポートされている科学技術の、今日から未来にかけての社会での役割を問い直さなければなりません。好奇心と趣味だけに基づく第1段階、従来の大学型研究の第2段階の考えに留まっているのは論外で許されません。今や、快適で心豊かな人類の生存のために、現在個々に分かれて発展している科学技術の第3の段階を総括して、第4の段階に乗り出すときが到来しています。

 私たちが、自分の仕事が今後どのように役に立つかといった将来へのビジョンを、自分自身が心底納得して持つこと。そのビジョンが正しいかどうか確認するために、様々な人に問いかけ、意見を聞き、確固とした信念を持つに至ることが求められます。ビジョンの説得には非常な忍耐が要求され、バイタリティも必要です。そうした忍耐強い場を経て得ることのできた「将来への確信あるビジョン」こそが、信念を生み出すのだと思います。信念なしには責任を持って仕事をやり遂げることはできないでしょう。こうした努力の上で、自信と勇気を持って新たな第4の段階を切り開いて行こうではありませんか。