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就任のご挨拶

平成11年9月3日

電子技術総合研究所長

児 玉 皓 雄

 この度、梶村前所長(現工業技術院長)の後を受けて、電子技術総合研究所第24代の所長を拝命しましたので、ご挨拶させていただきます。

 私は、昭和46年(1971年)に大阪工業技術試験所(現在の大阪工業技術研究所)に入所しました。それ以来、燃料電池や新型の電池開発に関する研究に携わってきました。平成5〜6年には、福岡工業技術センターの所長に任ぜられ、公設試において産学官連携の重要性を肌で感じてきました。それ以降、産学官連携の推進という命題をライフワークとして取り組んできました。平成7年からは、大阪工業技術研究所の所長として、国家プロジェクトを推進する一方、近畿圏にある研究機関、大学、公設試、企業との交流を活性化することで、存在感のある国立研究所の在り方を追求してきました。独立行政法人化の議論が本格化してきた折、9月3日付で電子技術総合研究所の所長を拝命し、まさに晴天の霹靂の思いでした。108年の歴史の中で電子技術の先駆者たるに相応しい多くの輝かしい業績を残してきた研究所の所長ということで、その責任の重さをひしひしと感じています。

 電子技術総合研究所は、情報・電子技術を基盤として、エネルギー、標準分野にまたがる幅広い産業科学技術の発展に貢献する研究開発を展開しています。新世紀を迎えるにあたり、環境問題、高齢化社会への対応、ネットワークセキュリティーの確立などに対する社会的要請は日増しに強くなっており、早急な対応を要する技術的課題が山積みしています。また、この不透明な経済状況の下、新規産業の育成に対する国立研究所の貢献を期待する声も大きなものとなっています。今更ながらに、電子・情報技術に関する総合的な研究開発力を有する当所への期待の大きさと、それに応えていく責任の重さを痛感しているところです。また、環境やネットワークの問題を解決するためにはグローバルな取り組みも必要であり、その意味でも研究開発の国際的展開を図ってきた国立研究所の役割は大きいと考えられます。

 近年のコンピュータの長足の進歩と情報通信の急速な高速・大容量化の結果、世界中の膨大な数のコンピュータが結合された巨大なネットワーク社会が発生し、今なおその規模を驚くべき勢いで拡大しつつあります。コンピュータはオフィスのみならず「お茶の間」や子供の勉強部屋にまで浸透し、それに伴って、個人が得られる情報量は飛躍的に増大しています。その影響力はまことにすさまじく、今や社会構造までをも変革しようとしています。一方、便利さの裏では、プライバシーの侵害や、ネットワークを悪用した犯罪等も増加しています。高齢者やいわゆる「情報弱者」をも含めた多様な利用者が、このような巨大ネットワーク環境を安全且つ快適に利用できることを可能にする、新たな技術の必要性が高まっています。当所では、情報の安全な伝達と高速で柔軟性に富んだ処理とを支えるソフトウェア技術と、その基盤となるエレクトロニクス技術や光情報通信技術等のハードウェア技術とを融合した新しい研究領域を形成し、次世代のネットワーク技術の開発を推進しています。

 次世代シリコンLSI技術の核となる0.1〜0.05μmの集積回路技術と、それを用いてコンピューターシステム全体を一つのLSI上に構築する「システム・オン・チップ」技術の開発研究は、既存技術の延長では達成が困難なため、投資規模もリスクも大きくなります。ところが、昨今の厳しい経済状況は、以前までのような企業ごとの大規模な投資を許さない状況にあります。他方、世界に目を転じると、この分野における各国間の開発競争は一段と激しさを増しており、我が国が主導権を握る事が出来るか否かは、全く予断を許しません。このような社会的経済的状況を背景として、国立研究所を中心に人と予算を集中的に投下してオールジャパンでこの問題に取り組むことが、産業界から強く要請されています。今後このような産学官連携での取り組みがますます多くなることが予想され、それに伴って国立研究機関の役割も大きくなることは間違いありません。

 このような状況の下、2001年4月1日には、独立行政法人化という、電子技術総合研究所、そして工業技術院傘下の研究所群全体が大きく生まれ変わる絶好の機会が到来します。現在、組織、研究領域、支援などいろいろな角度からのビジョン検討が行われており、独立行政法人化へ向けた議論はますます活発化、具体化してきています。しかしながら、「百里の道を行く者は九十里を半ばとす」、魂を入れる作業が始まるこれからが、最も重要な時と心得なければなりません。電子技術総合研究所が来たるべき新組織の中核となり、21世紀の我が国を真の意味で支えていくために、今こそ勇気と自信と気概をもって、未来に向かい突き進んでいく必要があろうかと思います。これまで皆様方に戴きました多くの激励とご支援に対しまして心から感謝の意を表しますとともに、今後ともより一層のご支援、ご鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。