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エネルギーネットワークの将来

エネルギー部長 神本正行


 気候変動枠組条約第3回締約国会議(京都会議)で、わが国は温室効果ガスを2008〜2012年(以下2010年)までに1990年比で6%削減することになった。産業、民生、運輸の各分野で削減のための行動が開始されたが、新・省エネルギー技術の導入普及やライフスタイルの変更を大胆に行わない限りその達成は困難と見られている。

 不足分を極力新たな技術開発で賄うためには、当然2010年までに大きな削減効果の期待できる技術の開発に重点化を図ることになるだろう。しかしエネルギー・環境問題が長期的課題であることを考えると、2010年は単なる通過点に過ぎないという視点もまた重要である。時間のかかる研究開発においては特にそうである。それでは2010年以降を見据えてどのような研究開発を行うべきだろうか。なすべきことは多いが、電力系統を初めとするエネルギーネットワークに関する研究開発もそのひとつではないかと思う。

 100年を越えるわが国の電力技術の歴史を振り返ってみると、電力需要の本格化した戦後は、ダムや発電所の建設とともに送配電が重要な課題であった。送配電系統に発生する異常電圧への対策のために、産学官の技術陣が寝食を共にしながら全国各地で実測を行ったという。先輩達の苦労と電力会社の不断の努力のおかげで、世界に類を見ない安定度の高い電力系統が出来上がったことは周知の事実である。ところが、優秀な電力系統の存在と一次エネルギー源である石油や核燃料の運搬のしやすさのゆえに、その後研究開発の面でエネルギー輸送が積極的に取り上げられることはなかった。しかし再びエネルギーの輸送が将来の重要な課題として浮上して来たように思う。

 第一にエネルギー・環境問題は長期的であると同時にグローバルな課題である。化石燃料が逼迫する将来は、自然エネルギーを電力あるいは化学エネルギーの形で長距離輸送することを考えておかなくてはならない。工業技術院のニューサンシャイン計画で取り上げられているWE-NETプロジェクトはこのような流れに沿ったものである。

 第二に国内だけを考えてみても、系統に連系される太陽光発電や燃料電池等の分散電源が徐々に増加しつつある。不安定な分散電源が大量に系統に入ったときの数々の問題点を改めて指摘するまでもないだろう。一方で規制緩和に伴い需要家のニーズにも多様化の傾向が強まりつつある。このような流れは必ずしも二酸化炭素削減にとって望ましい方向にあるとは限らない。将来の複雑化する電力系統には、効率と安定度が高く、需要家の多様なニーズにリアルタイムで応えられることが要求されるであろう。熱や燃料(水素や天然ガス)供給のネットワークとのシステム面での統合化も視野に入れるべきと思う。

 このようなエネルギーネットワークを実現するためには、情報処理、エレクトロニクス等に関わる多くの技術開発が必要である。電子技術総合研究所においても検討を開始したところであるが、2010年における温室効果ガス削減目標達成のための努力をしている今こそ、産学官の連携のもとに、エネルギーネットワークに関する長期的な技術開発戦略を立てるときではないだろうか。

(この論説は「電気評論」1998年9月号の巻頭言に掲載されたものです。)

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